「毎日ことばplus」がスタートして1年が過ぎました。無料会員が9千人を超えるなど多くの方にご利用いただき感謝します。「校閲は競争ではない」という考えを根本に、知見を広く共有して校閲の学びを効率化し、さまざまな立場で活用していただくことを目指しています。
目次
もっと校閲を学びやすく、身近に
校閲という、発信とは縁遠いような職種と思われそうな私たちがこのような活動をするようになった大きな理由の一つは、校閲のスキルはもっと効率的に学べるのではないかと考えたことにあります。
校閲の学びは、なるべく多くの事例に触れ、他者の指摘やフィードバックによって自分が気づかなかった点を知り、理解する経験を積んでいくのが基本です。
しかし、それでは、ゲラや指摘を見た人しかその場で学ぶ機会が得られません。また、そういった機会が誰にでも同じようにめぐってくるとも限らないのです。
職人的な仕事というイメージがあったせいか、実践的・体系的に学べる教材もほとんどなく、校閲者の共通認識と思われるような内容を知ることができる機会は非常に少なかったと思います。
そこで、事例や経験をコンテンツ化して蓄積することで、誰もが効率よく知識を得たり、校閲の考え方にふれたりすることができるようになるのではないかと考えました。
誰にでも役に立つ校閲の知識
校閲のスキルは校閲者だけの特殊なものではないと思います。
言葉は誰もが扱うものですし、求められる知識も、少数の人にしか関係のないようなものではなく、多くの人が「なるほど」「へえ」と思うような、広い意味での常識、一般教養といえます。
また、誤りや不適切な言葉遣いなどのない、安心して読める文章を作成することは、多かれ少なかれ、誰にとっても必要なことではないでしょうか。
実際に、校閲者だけでなく、さまざまな立場の方々に活用していただけていることに手応えを感じています。
組織や立場を超え「同じチーム」
校閲は競争ではありません。
少なくとも、他の誰かのミスを喜ぶような校閲者はいないはずです。他人のミスが自分の得点になるようなことはありませんし、そもそも自分はこんなミスをしないなどと言い切れないことを、誰よりも身にしみて分かっているからです。
基本的なことでも、ときに魔が差したように見逃してしまうのが校閲です。フォローし合い、ミスをしないように情報を共有することが一番大事なことだと思います。
私たちが、交代制で時間に追われながら大量の原稿を処理する新聞校閲だから、よけいに「チーム」を意識するのかもしれません。
しかし、校閲者や、文章をよりよいものにしようとする人は、組織や立場を超えて、みな同じチームだと思います。
他社の校閲記者たちともよく話しています。「取材記者は抜いた抜かれたがあるかもしれないけど、校閲記者にはない。協力し合える」と。
もしも、自分の目の前のゲラを正すだけでなく、コンテンツを見てくださったどなたかが関わる文章も救うことができるなら、校閲としてそれ以上に誇りに思えることはないでしょう。
これからも、校閲の知見の共有や、ことばの専門家との交流など、「校閲だからできること」を追求していきます。
ともに学んでいきましょう。
毎日新聞 校閲センター