8年ぶりに改訂された「三省堂国語辞典」(三国)8版では、表記が変更された言葉があります。校閲記者としても気になるポイントです。
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「sustainable」の片仮名表記は
毎日新聞として「sustainable」の片仮名表記はまだ決めておらず、このサイト「毎日ことば」で読者の方に問いかけたことがありました。三省堂国語辞典は主項目を7版の「サステイナブル」から8版で「サステナブル」に変更していました。
編集委員の飯間浩明さんは「サスティナブルは英語から離れている気がするが、今一番一般的なのはサステナブル。英語からするとサステイナブルになると思うが、日本語話者にとってすごく言いにくいらしく、サステナブルになっている。みんながサステナブルと言うのであればそれを主項目とすべきだということになる」と話していました。
「声掛け」は、こえ「が」け? こえ「か」け?
また、同様に迷うのでサイトで質問をした「声掛け」については7版の「こえがけ」から「こえかけ」に変更しつつ「『お』がつくと『おこえがけ』の形が多い」という注まで入りました。
かゆいところに手が届くといいますか、細かいところでありがたい記述があるものです。
「依存」は、い「ぞ」ん? い「そ」ん?
表記の変更ではありませんが、読み方が変わったものもありました。辞書の場合、読み方を変えると見出しが変わって順序も入れ替わることがあるので重要です。新聞ではあまり読み方は関係ないのですが、「質問 なるほドリ」というコーナーではルビを多用するので、実は迷ったことがある「依存」。
依存だけでなく、「共存」「現存」「残存」「併存」「既存」も「そん」から「ぞん」になっていました。
そういえば、NHKも数年前に「いそん」などを「いぞん」などへ変更したそうです。NHK放送文化研究所の方が「変更したところ、アナウンサーたちから『なぜ変えるのか』と反発の声があった」と話していました。伝統的な読み方を守ってきたのに……という気持ちがあるのでしょう。
10冊近く他の辞書を引いてみましたが、依存の読みを「いぞん」で見出しにしているものは見つかりませんでした。ここにも、飯間さんの言う「みんながどう言っているか」を重視する三国8版の姿勢が表れたと言えそうです。
【平山泉】