あまり見慣れないカタカナ語の使用について伺いました。
「フェーズ」の使う使わない、説明の要不要は真っ二つ
「段階」や「局面」を表すカタカナ語「フェーズ」。使いますか? 説明は必要? |
使うし、説明は不要 25.8% |
使わないが、説明は不要 21.4% |
使うが、説明は必要 19.2% |
使わないし、説明は必要 33.6% |
使う人45%、使わない人55%。説明は不要と思う人が50%弱、必要と思う人が50%強と、それぞれ真っ二つに近い結果になりました。およそ半分が「使用せず」「説明必要」と考えるとなると、「フェーズ」のように今ひとつ日常的でないカタカナ語をそのまま使うのは考え直した方がよさそうです。
カタカナ語の使用については本来、新聞は気をつけなければなりません。見慣れない言葉について読者から「意味が分からない」と言われることもしばしばです。しかし、例えば要人の発言で使われている言葉など、そのまま報じるべきケースもあります。説明を付けるにしても記者サイドに、話者の意図を正確に反映できるという確信がないと付けにくい、ということもあります。
また、単に日本語に直せばよいというものでもありません。以前、「機微な問題」という不自然な用語についてアンケートをとりましたが、この「機微」は「センシティブ(sensitive)」の訳語です。「センシティブな問題」では駄目なのか、というご意見もツイッターで出ましたが、日本語なら何でも分かりやすいわけではないという例だったと思います。
とはいえ「フェーズ」の場合は改善の余地がありそうです。東京都港区のホームページに掲載されている「(仮称)実践!やさしい日本語による公文書(案)」はカタカナ語の言い換えが充実しており、「フェーズ」も「様相 局面 段階」と言い換えることを提案しています。この文書ではカタカナ語について「区民にとってなじみの薄いこれらの用語については、適切な日本語に読み換えたり、説明や注釈を付けるなど、工夫して使用する必要があります」としていますが、全くおっしゃる通りだと思います。
そもそも今回の質問のきっかけになった「フェーズ」も防衛相の発言の一部でした。政府を含めたお役所は、情報発信にもう少し気を使ってほしいですし、情報を仲介する新聞もまたしかり。校閲記者もあまり及び腰にならず、「フェーズ(段階)」とするような直しを提案する姿勢を持つべきでしょう。
ところで港区の文書は完成したのでしょうか。内部向けの文書なので、意見募集が済んだら完成版を公表する必要はないのかもしれませんが……。「お役所言葉」が日本語を乱していると思うことはしばしばあります。この種の文書は各地の役所にあるようですが、公開して互いに参照し合うことで、良い指針を作ってほしいものです。
(2018年06月22日)
防衛相による北朝鮮についてのコメントに「圧力をかけ続けるフェーズだ」というくだりがありました。「フェーズ」――普段自分では使わないカタカナ語です。こうした言葉を原稿で目にすると、そのまま使って良いものかどうか悩みます。
「フェーズ」は英語「phase」の音をそのまま写した語で、「様相」「段階」「局面」といった意味を持ちます。ならば「フェーズ(段階)」などと説明を付ければよいのかな、とも思いますし、実際に付けられていることもあるのですが、必ずというわけではありません。
カタカナ語は、使う当人や、その人が属する集団にとっては便利な符丁なのかもしれませんが、必ずしも誰にでも分かりやすいとは言えない場合があります。どう扱ったらよいものか、「フェーズ」を例として伺ってみました。
(2018年06月04日)