日々の作業の中で、本来とは違う意味合いや、辞書ではあまり見つからない言葉遣いに出合って、立ち止まることは少なくありません。
そんな“気になる表現”のうち、しばしば見かけるケースへの対応や考え方について、マスコミ各社の用語担当者が参加する日本新聞協会用語懇談会に報告されたアンケート(毎日新聞大阪本社が関西地区で幹事社として主導)をまとめました。
これらの扱いは、用語基準としては決められていないものも多く、社内でも担当者によって意見が分かれたというケースが少なくなかったようです。そのため、回答は各社の公式見解ではありませんが、考え方の傾向はうかがえます。
あなたならどう感じるでしょうか。ぜひ一緒に考えてみてください。
目次
鬼門
直す=14社 |
直さない=7社 |
この場合の「鬼門」は「壁」などに直す、という声が多かった。鬼門は「苦手で避けたいものであるので、不自然」という意見のほか、「場所、方角のみで使用する」「元々呪術的意味で、スポーツと結びつけたくない」との声も。
一方で「辞書でも場所だけでなく相手や事柄など幅広い物への苦手意識としていて、違和感を覚えない」などとし、直さないとする声も3分の1を占めた。
匹敵
直す=19.5社 |
直さない=1.5社 |
ほとんどは、この「匹敵する」を「値する」「相当する」に直すとした。理由としては「『匹敵』は『程度が同じぐらい』のものを比較する語のため」などが挙がった。
しかし、「価値が同程度という本来の意味からさほど外れているとも思えず、迷う」「許容範囲と考える」という意見も少数ながらあった。
かざす
直す=6.5社 |
直さない=14.5社 |
多数派だった「直さない」の理由としては、「手をストーブにかざす」と同様だという見方が複数あったほか、本来の使い方からそう外れていないという意見や、言い換えが見つからないという声もあった。
しかし違和感の表明も一定数あり、「直す」とする意見では直し方の例として「当てて」や、「バーコードリーダーで商品の値段を」などを挙げた。
大食漢
直す=20.5社 |
直さない=0.5社 |
「漢」は「男」を表す漢字であり、女性には使わないという意見が圧倒的だった。直し方としては「大食」「大食い」が多かったが、「品がないので健啖(けんたん)家が無難」という意見も。
一方で「痴漢や門外漢なども、今や男女問わず用いている」と例文の使い方を許容する声があったが、「同じ『漢』でも、『大食漢』は許容しても、例えば『暴漢』なら?と考えるとなかなか難しい」とコメントが続いた。
ひもとく
直す=20社 |
直さない=1社 |
「ひもとく」は「解き明かす」などの意味合いに使われるケースが多くなっているものの、その意味を採用している辞書はまだ少ない。「歴史をひもとく」などという形だったら多少は違う結果になったかもしれないが、今回の例文では許容範囲としたのは1社だけだった。直し方は「明らかになってきた」「分かってきた」「解明されてきた」など。
中には「『ひもとく』を『解明する』意味では使わないことをはっきり決めており、『参照する』と置き換えて違和感があるものは直す」という社もあった。