しばしば見かける、本来とは違う意味合いで使われている言葉や、辞書ではあまり見つからない表現について、「直す」か「直さない」かをマスコミ各社の用語担当者に聞いたアンケートからまとめました。(調査について詳しくはこちらの①をご覧ください)
目次
万事休した
直す=11社 |
直さない=9社 |
意見が分かれた。わずかに多かった「直す」派では、「『万事休す』でひとつの形で活用はしない」などとして「万事休す(となった)」「万策尽きた」などにするというコメントがほとんどだった。
一方で、「直さない」とする意見も少なくなく、「昔からよく見られ、作家なども活用させて使っている」「口語体で違和感がない」「『休する(終わる)』と考えれば活用してもおかしくはない」などが理由だった。「文語の慣用表現の中の動詞を口語化していいものか悩ましいが、過去の紙面での使用例も多く、許容されているのが実情」との声も。
付き出し
直す=9社 |
直さない=11社 |
「直す」はやや少なかった。この「つきだし」は辞書では漢字表記は「突き出し」とされているが、それを理由に「突き出し」に直すとしたのは、6社にとどまった。ほかは「お通し」「前菜」にするなど、表現そのものを問題とした。
「直さない」とする声も、多くのコメントは表記ではなく表現について取り上げ、「誤解を生むとも考えられず、問題ない」などとした。「付き出し」の表記が浸透しているという指摘があったが、実際、意識していない担当者が少なくなかったようだ。「つき出し」は関西弁、「お通し」は関東弁という指摘もあった。また、語源は「お客に『突き出すから』という説もある」という。
けん引者(牽引者)
直す=14.5社 |
直さない=5.5社 |
本来の「けん引車」にするという声のほか、「車」だと人に対して使うのは違和感があるという認識から「けん引役」「リーダー」「先導者」などにするという意見を含め「直す」が7割を超えた。「けん引者」は誤用と決めているという社もあった。テレビ局は、「車と混同されがち」などとして「(プロジェクトを)けん引する人」「けん引している」「引っぱっている」などに文章ごと変える、という意見が多かった。
「直さない」という意見でも「『けん引車』とすると比喩的用法になり、直して違和感がある場合が出てくる。違和感がない場面なら直したい」という声や、「直す」としつつ「かえって意味が通じにくくなるなら「けん引者」も使う」とする意見など、それぞれ迷いも見られた。
お目にかない
直す=19社 |
直さない=1社 |
「お眼鏡にかない」「目にとまり」などに直すという意見でほぼ一致。「『お眼鏡にかなう』と『お目にかかる』との混同では」「慣用は『目にとまる』」「完全な誤用」などの指摘があった。