目次
毛氈
もうせん
(正解率 81%)羊毛などに圧力や熱などを加え布のようにした敷物。フェルトと同じ。ひな飾りに敷くのは赤い「緋(ひ)毛氈」。
(2017年02月27日)
選択肢と回答割合
じゅうたん | 11% |
ちりめん | 8% |
もうせん | 81% |
長柄の銚子
ながえのちょうし
(正解率 66%)柄が長い酒器。ひな飾りでは三人官女の一人が持つ。ちょうしは現在とっくりと同じ意味だが、昔は柄が付いた別物だった。
(2017年02月28日)
選択肢と回答割合
ながえのちょうし | 66% |
ながつかのちょうし | 15% |
ながらのちょうし | 20% |
台子
だいす
(正解率 65%)茶の湯で用いる道具を入れる棚。嫁入り道具とされたことから、女の子の遊びであるひな祭りに小さな台子が飾られるようになった。
(2017年03月01日)
選択肢と回答割合
だいし | 22% |
だいす | 65% |
だいこ | 12% |
行器
ほかい
(正解率 22%)「外居」とも書くがあまり使われていない。食べ物を運ぶための円筒状の容器で、五段など大きめのひな壇に飾られる。
(2017年03月02日)
選択肢と回答割合
おしき | 51% |
ほかい | 22% |
あんどん | 27% |
衣桁
いこう
(正解率 37%)着物などを掛ける鳥居形の家具。えもんかけと同じ。ひな飾りの一つとして小さな衣桁が飾られる。
(2017年03月03日)
選択肢と回答割合
いげた | 42% |
いこう | 37% |
ころもかけ | 21% |
◇結果とテーマの解説
(2017年03月12日)
この週は「ひな道具」でした。
ひな人形以外の飾りは大昔の嫁入り道具や結婚式、宮中の道具を模した物ですから、それらを使わなくなった現代では難問が多かったのではないでしょうか。
最も正解率が低かったのは「行器」。この言葉は新聞ではひな祭りではなく別の場面で出てくることがあります。国の重要無形民俗文化財で「日本三大祇園祭」の一つといわれる「会津田島祇園祭」(福島県南会津町)に、「七(なな)行器行列」というメイン行事があります(下の写真)。花嫁姿の未婚女性が行列で、魚や神酒などの供物を七つの「行器」と呼ばれる器に入れ神社まで届ける姿が7月に報道されます。
最も正解率が高かったのは「毛氈」。これも結婚式と関係が深く、花嫁花婿が神社に入るときの敷物として緋(ひ)毛氈が使われます。だから、結婚式を模したひな飾りには付き物なのでしょう。
「長柄の銚子」は三人官女の一人が持ちます。他の官女は、中央が「三方」という台、または「島台」という飾り物。もう一人は「提子(ひさげ)」という銚子。ひしゃくのようにも見える長柄の銚子と違って、こちらは小さな鍋のようにも、やかんのようにも見える物です。
「台子」は茶道用具の棚ですが、上流階級の嫁入り道具として茶道関係は欠かせなかったと思われます。「台子」の「子」をスと読むのは、唐音と呼ばれる音読み。中国から禅宗の僧などが持ち込んだ、比較的新しい読みです。茶の湯は中世に中国からもたらされた文化なので、その道具の読みも唐音になるのでしょう。ただ、ひな道具として台子までそろえるのは相当なお金持ちかもしれません。入江相政編「宮中歳時記」(小学館文庫)には当時の吹上御所のひな道具が列挙されていますが、台子は見られません。
「衣桁」は出てきました。
衣桁 大小一対
鏡台 手鏡に置き台の付いたもの
……
などと列挙されています。
ところで衣桁の別名は「えもんかけ」ですが、これも現代の一般家庭では死語になりつつあるようです。1990年の「消えた言葉」(橋本治編著、アルク)の一つに「衣紋掛け」があり、ハンガーのことを「えもんかけ」という人が多かったとありますが、もはやそれもハンガーと呼ぶ人がほとんどとなっているのではないでしょうか。それでも、以下の文章の味わいは針金の「ハンガー」では得難いと思います。
年に何回か、家族で外出する際にも全員のよそ行き着が鴨居に吊るされた。
部屋と部屋の境の横木である鴨居と直角に“えもんかけ”を掛けるためには、部屋の境の襖を開け放さなければならない。いつもは立て切っている襖が開け放されると、“えもんかけ”に掛かった柔らかい生地のよそ行き着は、人の出入りでおこる微風になぶられてゆらゆら揺れた。
子供の頃の外出気分の高揚は、こうして洋服を鴨居に吊るす時点から、すでに始まっていた。たまのよそ行きに心を踊らせながら、本格的ないかり肩のえもんかけに、折目を崩さぬよう慎重に和服を着せ掛け、襖を開け放って鴨居に吊るしていた母や祖母も、やはり同じ高揚感を感じていたのではないか。
ハンガーを“えもんかけ”と誤用する習慣は、一般的には、洋服をハレの日だけタンスから取り出して鴨居に吊るすという習慣がなくなるのに前後して消えたという記憶がある。(井田真木子)
「鴨居」「襖」などの日本家屋とともに失われた昭和の懐かしい家族風景です。
思えば、ひな人形も普段はしまわれていて、ハレの日の前にだけ姿を現すからこそ心躍らせるものなのでしょう。3月3日を過ぎてすぐしまわないといけないと言われるのは、そうしないと婚期を逃すという俗説以上に、ハレの日の華やぎを大事にするからという理由が大きいのかもしれません。