「哀しみ」と書くと特別なニュアンスを感じるかもしれませんが、新聞では常用漢字表に合わせ原則「悲」を使います。ちなみに「かなしい」(かなし)は、古くは「かわいくてたまらない」などの愛情表現でも使われ、悲哀に限らず切実に心が動かされる様子を表す言葉でした。
「悲」は「心が痛む」という意味を表す字。「かなしい」について、「漢字の使い分けときあかし辞典」(円満字二郎、研究社)は、「《悲》を使っておけば、間違いにはならない」としつつ、「深い『かなしさ』や、受け容れるしかない『かなしさ』の場合には、《哀》を使うと効果的」と解説しています。
中型以上の辞典では、「かなしい」の項目に「悲しい」「哀しい」とともに「愛しい」の表記も示されています。
この言葉について日本国語大辞典は、「対象への真情が痛切にせまってはげしく心が揺さぶられるさまを広く表現する。悲哀にも愛憐にもいう」とし、大辞泉には「古くは、いとしい、かわいい、すばらしい、嘆かわしい、心が痛むなど、物事に感じて切に心の動くさまに広く使われたが、近代では、主に心の痛む意に用いられるようになった」とあります。
ちなみに、写真の文中「憎しみあう」については、誤りであるという立場もあり、こちらで解説しています。