YouTubeチャンネル「#有隣堂しか知らない世界」を制作する方々へのインタビューも最終回となりました。いかにして停滞期を脱したか、今後の展望は……などを尋ねて締めましたが、大切な役「黒衣」の方にもお話を伺うことができました。#ゆうせか
YouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」が人気の書店「有隣堂」を訪ねた毎日新聞校閲センターの大庭穂香と平山泉がお話を聞く最終回。収録当日のことや、今後の展望を伺いました。
【大庭穂香】
(前回はこちら)
【インタビューに応えた方々】(「有隣堂しか知らない世界」制作チーム)
阿部綾奈さん(有隣堂社長室デジタルクリエイティブチーム)
ハヤシユタカさん(チャンネルプロデューサー)
R.B.ブッコローさん(チャンネルMC、ミミズクのキャラクター)
【話題に登場した方々】
松信健太郎さん(有隣堂代表取締役 社長執行役員)
渡辺郁さん(有隣堂広報・マーケティング部)
市川紀子さん(有隣堂広報・マーケティング部、今回の取材に対応)
平山:打ち合わせには結構時間がかかるのでは。
ハヤシユタカさん:この(取材の)後、ぬまのうさん(絵本作家、ぬまのうまきさん。取材当日に収録がありましたhttps://www.youtube.com/watch?v=No0BEaq9xTc)と打ち合わせをするんですが、その時は彼(ブッコローさん)は同席しないんですよ。
R.B.ブッコローさん:30分くらいどこかで遊んできてとか言われるんですよ。
ハヤシさん:その次は僕とこの人(ブッコローさん)の打ち合わせ。それはそんなに長くないですけど。そんなふうにやっていくので、ちょっと時間かかっていますね。30分くらいかかってるのかなあ。短くても。
平山:収録には何人くらいが立ち会うのでしょう。
阿部綾奈さん:人数としては、プロデューサーとブッコローさんと、あと私がまあディレクター的な、現場のディレクション周りで立っているのと、あと(有隣堂で当初から動画を担当している)渡辺郁さんも同じような立ち位置でいる、あとは機材のメンバーが2人でやっています。あと黒衣ちゃんですね。ブッコローを動かす黒衣役もうちの社員でやっているので、そのメンバーもいます。だから、ミニマムだとまあ5人とかなんですけど、今日はわりと人数がいる感じですね。
ブッコローさん:多いなっていうイメージですか。
平山:いやいや、それだけ要るよなっていう……。うちのイベントもミニマムでやっている感じですね。
阿部さん:内製ですよね。中でやられてるんですよね。完全に。
平山:撮影はちょっと大変なので関連会社の毎日映画社の人にお願いしています。
大庭:イベントはそうなのですが、動画の「校閲力講座」は自分で三脚を立てて、カメラをセッティングして、「ワンオペ」で収録しています。
平山:黒衣さんも、先日の24時間生配信の時は途中で交代したりとか大変でしたよね。
阿部さん:そうです。あのとき黒衣だけでも10人くらいいたのかな。
平山:なんでも椅子がつぶれたとか……。
阿部さん:そうなんです。過酷なイベントでした。
平山:お疲れ様でした……でも、参加できて楽しかったです。
大庭:あとは、苦労したところや、ちょっと失敗したなといったところがあれば……。印象に残るというか、これを経たから今は回っているなみたいなところはあるでしょうか。
阿部さん:私自身はまだ入って1年半くらいで、あまりないかなと思っています。日常的に忙しくて大変な思いはしているんですが、エピソードとして語れるところはそんなにありません。渡辺さんがよく言うのは、過去に週2回更新だったことです。今は毎週火曜日のお昼に1本収録動画を出しているんですけど、半年間くらいですか? 週2本公開していたことが……。
ハヤシさん:半年は持たなかったんじゃない? 3カ月くらい?
ブッコローさん:うん。
ハヤシさん:いやもう俺それで死んだんだよ。
阿部さん:そうですよね。それがすごく大変だったというのは、当時の現場にいた人たちから聞いています。
平山:それは、最初から2回でなくて、増やそうと?
ブッコローさん:途中でちょっと停滞期に入ったから、打破するためにも動画の本数を増やしていかないといけないという話になって、週に2回、2本動画を公開していた時期があったんです。言うほど倍々的に登録者数が伸びるわけじゃなくて……そんなに変わらないんじゃあ何のためにこんな大変な思いして上げてんの?ということで、戻すことになった。週2の時期がちょっとだけあっての(現在の)週1です。
平山:停滞期があったということですが、それを抜けた要因が何かあったのでしょうか。
阿部さん:どうなんでしょう……。週2回が終わったタイミングで月2回の生配信の運用が始まって、だいぶそれが定着してきてはいますね。
ハヤシさん:でも停滞を脱したって、実はこれだっていうのはなくて……。結局は続けられたこと、続けてきたことに尽きるんですよね。停滞を抜けたきっかけは2回あって、一つは初期のころ、ネットメディアの「ねとらぼ」というところでチャンネルを紹介していただいた時なんですよ。それは完全に偶然で、僕らから取材をお願いしたわけでもなくて、ねとらぼの記者の方がたまたまこのチャンネルを発見してくれて。それで我々の知らないところで記事を書いて公開してくれたんですけど、それがすっごく跳ねた(急激に見られるようになった)んですよ。
それもやっぱり、面白いと思った動画を諦めずに作り続けていたってことで、ねとらぼの記者が知ることになり、すごく前向きな記事を書いてくれるところにつながったので、大きくこれがっていうのは、その時点でもないと。
で、2回目は、中山七里先生という方に出演していただいた時の動画がすごく跳ねて、このチャンネルで一番再生数が伸びているんですけど……。
もちろん大物作家さんが来てくれて、普段よりも大変なロケとか編集はしたんですけど、それでも変わらず面白いものを作った、変わらず公開したっていう形でした。それがたまたま多くの人に見られて、それでチャンネルの存在を知った人が他の動画も見てくれて、ああ面白いね、登録しようっていうことになったわけで、結局は継続。面白いと思ったものをひたすら継続したというところが結論です。
で、もうちょっと言うと、それを許してくれた有隣堂という会社もそうですし、松信健太郎社長という人もそうなんですけど、そこの覚悟がちゃんとあったからというところはあると思いますね。

一番再生回数が伸びているという作家の中山七里さん登場回
https://www.youtube.com/watch?v=HwvSdRFQqrk&t=232s
平山:そういうことも大事ですよね。続けられる環境ということが。
ハヤシさん:そう思います。ほんとに。
大庭:私も中山七里さんの回でこのチャンネルを知りました。
ハヤシさん:あ、ほんとですか。よかったです。
大庭:もともと中山七里さんが好きだったんです。
ハヤシさん:あ、そうなんですか。渋いですね。
ブッコローさん:七里さんきっかけかあ。やっぱ。そうなんですねえ。
大庭:あれは編集もそうですし、撮影もすごく大変ですよね。ずっと密着して……。
ハヤシさん:まあカメラは置きっぱなしにしてただけなんですけど、やっぱり素材が24時間あったんですよね。
大庭:ああ、そうですよね。
ハヤシさん:それがまあ見直すのに……。
ブッコローさん:24時間全部見たんですよ。
平山・大庭:ああ……。
ハヤシさん:見直すだけで24時間かかるんで、それは大変でしたけど……頑張りはしました。
平山:私は山本(康一・三省堂辞書出版部部長)さんの回。辞書の話でしたが、私は辞書について取材もするし、辞書関係者と仲良しなので、あら、山本さんが出ているみたいな感じで。
阿部さん:山本さんきっかけでしたか。

三省堂辞書出版部部長の山本康一さん登場回
https://www.youtube.com/watch?v=ag3rSbCRz68
大庭:最後に、今後やってみたいテーマや目標、展望などを伺えれば。
ハヤシさん:24時間生配信?
阿部さん:いやもういいですね。
ブッコローさん:30時間……。
阿部さん:いやもう……耐久はやめましょう。
ブッコローさん:耐久はね。
阿部さん:耐久じゃないやつ。テーマはなんだろうな……。本当にありがたいことに、いろんな方、外部のゲスト、作家さんだったりとか、メーカーさんだったりとかが出てくださってはいるんですけど、今日、いろいろ話しながらですけど、やっぱり社内の人間をもっと出していきたいということは、中の人間としてはすごく思っているんです。
最初にお話ししたように、元々社長がYouTubeを始めたきっかけとしては、成功体験が必要だというところが大きくあると思うのですが、社内の成功体験者を増やしていくというところは今すごく重要なミッションだと思って進めているんです。どんなテーマでもいいので、なるべく社内の人間が表に出て話していくような機会を作っていきたいなと思っています。
ブッコローさん:出てもいいよ。
ハヤシさん:出てもいいよ。
阿部さん:わかりました! ブッコローさんはどうですか? やりたいテーマありますか?
ブッコローさん:私がやりたいテーマは……そろそろ……ロケ。私はロケやりたいですよ。
ハヤシさん:(笑い)
阿部さん:行きたいところありますか?
ブッコローさん:いやもう世界中。
阿部さん:海外ロケとか。

にこやかに場をまとめてくださる阿部綾奈さん
ブッコローさん:海外ロケ。やりたいテーマは、僕は海外ロケです。でも怖いのが、海外ロケ行ってきましたよ、じゃあ、収録は(有隣堂本店のある横浜市の)伊勢佐木町でっていう可能性がある。
一同:(笑い)
ブッコローさん:うわあ!海きれいー!……とかっていうのをここでやらされる可能性があるんですよ。それだけは本当にきつい。それはもう本当に嫌。同行海外ロケがいいですね。
平山:では、いずれは新聞校閲なども……。
阿部さん:面白いと思います。
平山:何か協力してできれば……毎日新聞校閲センターのイベントにも出ていただきたいですし。
ブッコローさん:大丈夫ですか。「新聞なんか今時誰が読むんですか?」とかから始まりますよ。
阿部さん:そうですね。
平山・大庭:でしょうねえ(笑い)。
ブッコローさん:P(プロデューサー)はやりたいこと、ありますか?
ハヤシさん:僕は……24時間生配信の時に、やっぱりイベントって面白いなって思ったので……イベントをやりたいんじゃないですかね。24時間生配信を超える……で、それなりの数字、明確な数字を残すってことはとても大切です。明確な数字を残すことが、もちろん外部の人、それは消費者の人もそうですし、メディアの人たちにもインパクトを起こせるし、社内の理解も上がる。小売りの文化の歴史があるお店は、「YouTubeで今登録者何人です」っていうよりも、「売り上げ100万円です」の方が、きっといいんだろうと想像するんです。だからそういう数字を残すような何かっていうのはやんなきゃいけないですし、やりたいなと思いますね。
平山・大庭:なるほど……今日は楽しいお話をありがとうございました!
その後、収録を見学させていただき、非常に勉強になりました。その中で「黒衣」の方にもお話を伺うことができました。「台本はない」中でブッコローさんが好き放題に話すのにぴったり合う動きをしているところを目の当たりにしたので、かなり大変なのではと尋ねました。動きを合わせるコツをマスターするのには、やはり1年半もかかったそうです。重たいものを動かし続けて1時間以上……このYouTube動画の人気を支えているのは黒衣の方の力も大きかったのです。
さて、楽しい時間はあっという間。たっぷりお話を聞くことができました。校閲という本業がありつつ事業の活動もする我々にとっても“刺さる”お話がたくさんありました。
理論を踏まえながら、視聴者はもちろん会社の人々にも伝わる動画作りを目指すハヤシさん、軽快にウイットに富んだ会話を繰り出すブッコローさん。自由奔放に(?)話す2人を時にあしらいながら場をまとめていく阿部さん。この日いらっしゃった方はもちろん、動画に携わる皆さんで協力して「ゆうせか」を育んでいるんだなあと感じました。ゆうせかには「愛」を感じる動画がたくさんありますが、それぞれが、いろいろな愛を持ってゆうせかに関わっているからこそ、面白いコンテンツが生まれているのだなと思います。
これからも「ゆうせか」の動画に注目です(そして我々もいずれは……)。(おわり)

大庭穂香(奥左)、平山泉(同右)、ブッコローさんで3ショット(大庭の手にはmyブッコローも)。貴重なお時間をいただき、本当にありがとうございました!