「かたまり」の表記について伺いました。
目次
「塊」とかな書きが僅差
野党は大きな「かたまり」を目指すべきだ――カギカッコの中、どう書きますか? |
固まり 13.2% |
塊 44.6% |
かたまり 42.2% |
複数の政党が一丸となるような「かたまり」をどう表記するかは、「塊」を選んだ人が「固まり」の3倍以上に達しました。もっとも、「かたまり」も「塊」に近い支持を集めており、かな書きも有力であるとうかがわせます。
「集まり」と「かたまったもの」
今回の質問のきっかけになったのは、かつて外相も務めた政治家が新党を作った際の言葉。「(野党は)大きな塊をつくっていかなければならない」――他の野党から分裂して新党を作った政治家の言葉であることを考えると、少々複雑な感想も湧くのですが、それはさておき。この「塊」を通信社の原稿は「固まり」と表記していましたが、毎日新聞では「塊」として報じました。一方、他の新聞社では「かたまり」とかな書きにしているところもありました。
毎日新聞用語集では、「かたまり」の書き分けについて、以下のように案内しています。
かたまり
固〔主として集まり〕星の固まり、やじ馬の固まり
塊〔かたまったもの〕脂肪の塊、欲の塊
共同通信の「記者ハンドブック」(14版)では「塊」の方に「金・土・肉の塊」という用例が加わっていますが、内容はほぼ一緒です。バラバラのものであっても、ある程度の範囲内に密集している場合は「固まり」、見た目には一つのものと言ってよさそうな場合は「塊」――と考えてよいでしょう。
「本来独立」か「全体で一つ」か
国語辞典は「かたまり」の表記について、あまり詳しく触れていません。見出し語で「塊」だけを載せる辞書もありますが、多くは「塊・固まり」の表記を併記しており、特に使い分けを案内してはいません。広辞苑(7版)が、「群れ。一団。『一かたまりの学生』」といった意味では「固まり」、「比喩的に、性向や信仰などが極端であること。また、その人。『欲のかたまり』」といった意味では「塊」と書くことが多いとしているのが目に付くぐらいです。
中村明さんの「日本語 語感の辞典」は「固まり」「塊」をそれぞれ立項しています。「固まり」については「『固まる』という動詞から転成した名詞だけに、『塊』に比べ、構成要素が本来独立している印象が強い」とする一方、「塊」は「『固まる』という動詞の連想が弱いだけに、『固まり』に比べ、全体で一つの存在という印象がある」としています。このような解説は、今回の質問の場合にも参考になりそうです。
迷う場合は、かな書きも
政党は本来独立しているものですから、集まったとしても別々のものだという意識が強ければ、集団として大きくなったとしても「固まり」だという認識になるでしょう。一方で、与党に対して一つになって当たるために結束するのだと考えれば「塊」という認識になります。
記事中の発言のように、あえて「つくっていかなければならない」というなら、単なる集団ではなく、一丸となって事に当たることができるような「塊」が適切と考えられます。ただし、どう判断するか決めにくいと考えるなら「かたまり」とかな書きにするのも一つの方法と言えるでしょう。
(2024年01月29日)
巨大与党に野党が立ち向かうにはどうしたらよいか、ということが話題になる記事では、毎度のように質問文のフレーズが現れます。出題者の個人的な感想としては「そうだよなあ」半分、「また言ってるよ」半分、というところでしょうか。
それはともかく、この「かたまり」をどう書くか。毎日新聞用語集は「かたまり」の項目で、「固まり」は「主として集まり」に使うとして「星の固まり、やじ馬の固まり」という例を挙げています。一方の「塊」は「かたまったもの」として「脂肪の塊、欲の塊」といった例を挙げます。
毎日新聞のこれまでの記事では「塊」が使われています。目指すというなら「集まり」よりは、ゴロンとした一つの物体になった感のある「塊」のほうが、与党とぶつかるにふさわしい印象を与えるからかと思います。しかし、同じ内容の記事でも「固まり」を使うメディアもありますし、平仮名で「かたまり」とする社もあります。皆さんはどの書き方がなじむと感じるでしょうか。
(2024年01月15日)