新聞紙面には事件事故ばかりでなく、季節のたよりや自然現象、珍しい生き物が見つかったなどという話題も多く登場します。今回は海の生き物が好きな校閲記者が、紙面で見つけた話題をご紹介します。
海の生き物好きにとって、2013年はダイオウイカの一年でした。1月にはテレビで生きたダイオウイカの映像を目に焼き付け、夏には国立科学博物館の特別展「深海」がヒット。実物大のプロジェクションマッピングや模型が東京都内に出没し、年末には流行語大賞候補にもノミネートされるなど一大ブームとなりました。
ブームの余韻か、14年も日本海側で見つかっては話題になっています。ダイオウイカといえばその巨大さが魅力。ある記事では「触腕とよばれる長い腕が……残っていれば全長8㍍と推定される」といいます。なんという大きさ! しかしその約1カ月後、別な場所でも見つかります。その記事では「『触腕』というもっとも長い足が……」。ダイオウイカのにょろにょろした部分は腕? それとも足なのでしょうか。
食材としては「げそ(下足)」という呼び方も一般的。イカやタコは頭部から触手が生えているさまから「頭足類(軟体動物門頭足綱)」という名前で分類されます。ではそもそも「腕」や「足」とはいったい何なのか。日本国語大辞典第2版は、腕は「動物の前足、及び物をつかむ働きをする(器官)」、足は「からだを支えたり移動させたりすることに用いる器官」としています。
イカには10本のにょろにょろがあり、それでエサを捕まえたり泳いだりすることはあっても、海底で立ち上がったり歩いたりはしないでしょう。すなわち、ダイオウイカのにょろにょろは「腕」ということができそうです。生物学的には第1~4腕の4対8本の腕と、他より長い1対2本の触腕の計10本とされます。イカの中には成長とともに触腕がちぎれて腕が8本になってしまう種類、その名もタコイカもいます。まだまだ不思議がいっぱいの生き物の世界、目が離せません。
【三股智子】