「3球フォークボールを連投」「愚直に稽古を積んだ大関」「当時走りだったビデオデッキ」「悪い流れにくさびを打ち込む」「胸騒ぎのするような楽しいアトラクション」……
しばしば見かける、本来とは違う意味合いで使われている言葉や、辞書ではあまり見つからない表現について、「直す」か「直さない」かをマスコミ各社の用語担当者に聞いたアンケートをまとめた第4弾です。(調査について詳しくは①をご覧ください)
目次
連投
直す=16.5社 |
直さない=4.5社 |
「連投」は「1試合のなかでは使わない」「ゲーム単位の言葉」「連日投げるのが連投」「一部辞書では例示としてあげているが、『試合』に対して使うのが慣例か」などとして、この場合は「直す」とする意見が多数を占めた。直し方の例は「続けて投げ」「3球続けてフォークボールを投げ」など。
一方で約2割が「違和感がない」「実際に使われている」などを理由に「直さない」とした。「『日』単位を『球』単位に応用しただけだから特に問題はない」「スポーツの用語は治外法権なところがあり、辞書が採用するとか一般に定着するとかでなく、その世界で通用していればOKになる傾向がある。この表現も運動面記事では定着している表現と言っていいのでは」との声も。ただスポーツ紙で「直す」とした社もあった。
愚直
直す=12.5社 |
直さない=8.5社 |
意見は割れた。多数派は「直す」だったが、理由は「他人に対して使うと失礼になる言葉のように思う」「『融通のきかない』などマイナス点を含んだ表現のため」「自分がへりくだって表現するもので第三者がいうのには違和感」などが挙がった。直し方は「きまじめ」「一生懸命」「ひたすら」「地道に」など。
一方、「直さない」とした理由は「本来は損な役回りの場合に使うが、『ばか正直』の意味もありさほどの違和感はない」や「肯定的なニュアンスで使う場合もある」など。また「マイナスの意味かどうか判断が難しい」との指摘も。直し方の例として「愚直なまでに」を示した社もあった。
走り
直す=15.5社 |
直さない=5.5社 |
数字はほぼ3対1だったが、「直す」の中には「はしり」と平仮名なら使うとする声もあり、表現を問題とすれば差はもっと縮まる。また、テレビ局では「直す」としたところがほとんどで、分かれたのは主に活字メディアだった。
「直す」理由は「『世に出て間もない』ということと『物事の先駆け』というのは少し違う」など。直し方は「発売間もない」「まだ珍しかった」「出回り始めた」などが挙がった。
「直さない」理由では「本来は『前触れ』の意味だが、最近は『流行の最先端』として誤解している人が多くなり、わざわざ直さなくてもよいのではないか」などがあった。
くさびを打ち込む
直す=19.5社 |
直さない=1.5社 |
「直す」という意見がほとんどだった。直し方は「歯止めをかけた」や悪い流れを「断ち切った」「食い止めた」「変えた」など。
例文の表現については「『勢力を二分』の意味が、単に『分断』と解釈されている」「敵勢力を分断する場合に使うのが基本なので、『連敗を分断』では、次にまた負けるような感じがする」などの指摘があった。「『くさびを打つ』との不完全表現がしばしば見られる」との声も。
胸騒ぎ
直す=21社 |
直さない=0社 |
「直さない」はゼロ。迷うという声もなかった。「胸騒ぎ」は「心配事や悪い予感があるときに使う」「マイナスのドキドキを表す」ため、「胸が躍る」「ワクワクする」などに直す、という意見で一致した。