パラリンピックの開催にちなんで「しょうがいしゃ」の表記について伺いました。
「障がい」が4割強、「障害」は3割
パラリンピックは「しょうがいしゃ」スポーツの祭典ですが、どの表記を使いますか? |
障害者 31.1% |
障がい者 43.4% |
障碍者 10.8% |
表記にはこだわらない 14.7% |
交ぜ書きの「障がい者」が4割強、「障害者」が3割。常用漢字にない「碍(正字は礙)」を用いた「障碍者」は文字になじみが薄いためか1割程度でした。
「しょうがいしゃ」という言い回しは比較的新しいものです。内閣府に存在した「障がい者制度改革推進本部」で、「障害」の表記について検討されたことがあります(「障害」の表記に関する検討結果について)。
この報告の中に、戦前は心身機能の損傷のある人について「障害者」ないし「障碍者」が用いられたことはほとんどなく、いわゆる差別的な言い方が使われていた、とあります。
従って「しょうがいしゃ」の表記に当たっては、本来はどうだったか、というような議論は成り立ちにくそうです。
報告によると、交ぜ書きの「障がい」が使われるようになった理由は、柔らかい印象がある▽「害」の字は「害虫」や「公害」に含まれる字で印象が悪い――などとのこと。
一方で「障害」でよいと考える側からは、既に広く普及している▽表記を変更しても同じ議論がまた繰り返される▽交ぜ書きは日本語として不自然――などの意見が出ています。
新聞では各紙とも基本的に「障害」を用います。使い慣れた「障害」よりも「障がい」や「障碍」の方が明らかに良い、というほどの根拠が現時点では見当たらないということです。
今回のアンケートでは「障がい」が「障害」よりも多数でしたが、ツイッターには当事者の方から「障がい」は意識されすぎているようで違和感がある、という趣旨の意見も寄せられました。人によって感じ方の差が大きい言葉であることは間違いありません。
国語辞典では「大辞泉」が、「しょうがいしゃ」について特に詳しく解説していました。
大辞泉2版
懇切な説明だと思います。多くの人がこのように意味を理解できるなら、表記はさほど問題にならなくなるかもしれません。
(2018年03月27日)
まずお断りしますが、正解はありません。この言葉についてはさまざまな意見があるので、回答も割れるだろうと予想しますし、こだわらないというのも一つの考え方だと思います。
「障がい者」はパラリンピックにも関わる「日本障がい者スポーツ協会」など固有名詞でよく登場します。「害」の字の印象が悪いという理由から、あえて交ぜ書きにすることが多いようです。
毎日新聞をはじめ新聞社や通信社は、固有名詞を除いては基本的に「障害者」と表記します。「障」にも「さしさわる」というネガティブな意味があるため「害」だけを仮名書きにする理由を説明しづらい▽交ぜ書きは読みにくいため全体的に減らす傾向にある▽国の法令や制度などでは「障害」が用いられるため整合性を取りやすくする――などの事情があります。
「障碍(障礙)」は本来「しょうげ」と読んだ仏教語。明治ごろに「しょうがい」と読まれるようになり、その音から大正期には「障害」に取って代わられるようになったとのこと。「碍」は常用漢字に入っていないので新聞では使用しません。
(2018年03月09日)
2018年5月に国会で「障碍」という表記を可能にするようにという決議があったことを踏まえ、こちらの記事で「障碍」表記について取り上げました。