2020年入社。大学では哲学を専攻。いつか文章に関する仕事につきたいと思っており、校閲記者には学生時代から漠然と憧れていた。大学時代にスポーツ紙の校閲のアルバイトを経験したが、スポーツはやるのも校閲するのも苦手。趣味は映画鑑賞で、学生時代には友人たちとLGBTQを中心的テーマにしたクイア映画祭も企画・実行した。
土田杏奈(つちだ・あんな)
2020年入社。大学では朝鮮語を専攻し、詩や小説から朝鮮半島の歴史などを学んだ。伝統あるものが好きで、昔から人々の暮らしに密着していた新聞に興味があり、新聞社を志すように。いつも新たな発見がある校閲という仕事に日々やりがいと奥深さを感じている。趣味は文楽鑑賞、寺社巡り。
栗原菜摘(くりはら・なつみ)
2021年入社。小学生の頃から誤字脱字に敏感で、児童書の誤字に気付いて出版社へ電話をかけようとしたことがある。国文学科での知識を生かせる職業を探していた時に校閲記者の募集を見つけ、これは天職と思い応募した。阪神タイガースファンで、阪神の話ばかりしている。オフシーズンはもっぱら本の虫。
加藤史織(かとう・しおり)
2018年入社。中学生の頃、本で校閲という仕事を知り「間違い探しみたいで楽しそう」と興味を持つ。大学時代にフリーペーパーのサークルで実際に校閲を経験し、より多くの人にとってわかりやすく親切な記事を届けたい、という思いを強くし校閲の仕事を志望した。趣味はスポーツ観戦、ライブ・舞台鑑賞。
目次
「天職では?」と思いインターンに
――校閲記者を志望した理由はなんですか?
栗原 私は大学が国文学科で、日本語だったり語学関係だったりを勉強していて、できれば大学で学んだことが生かせる職業につきたいなと思っていました。それでたまたま大学の図書館で「校閲記者の目」(毎日新聞出版)という本を見つけて、読んでみて。「これ! 天職では?」と思ったその勢いのままインターンの募集を探して、参加させてもらいました。その後選考に通って、そのまま配属されました。
高田 私は小さい頃から本を読むのが好きだったので、文章に関わる仕事をいつかできたらいいなとは思っていました。大学時代にアルバイトでスポーツ新聞の校閲をやっていて、それも結構楽しかったんですね。夜遅くにみんなで集まって、文章をひたすら読んでいるみたいな(笑い)。なんか結構面白くて、毎日新聞のインターンも栗原さんと同じで行きました。それで毎日新聞の社風も好きだなって。選考とか面接も楽しくお話ができて、今に至っています。
土田 すみません、ちょっと難しいかもしれないんですけど。私は一般記者で入社して、自分の希望というよりかは、校閲に異動ねっていわれて(校閲部に)来たんですね。でも小さい頃から言葉に興味があって。教育テレビ(NHK)の「にほんごであそぼ」とかすごく大好きで、古典作品の暗唱とか、あと韓国語とかもすごく興味があって、独学で勉強したりとかして。大学もそういう系に進みました。言葉に関する仕事とか、あと新聞っていうか伝統のあるものが好きだったので、新聞社はすごくいいなと思っていました。
高田 最初は校閲志望じゃなかったってことでしたけど、今は楽しく働けていますか?
土田 そうですね。インターンの校閲講座は全然できなかったんですけど(笑い)。毎日(仕事を)してて、本当に奥が深いなって。
――校閲のインターンはどういうことをやったんですか?
栗原 まず社内の見学をさせてもらって、その後はダミー紙面(よくある誤字脱字や間違いが埋め込まれている、トレーニング用の新聞紙面)を配られて。もう(今と同じように)赤ペン握って(笑い)、頑張って!と励まされながらやりました。楽しいですよね、絶対に間違いがあるってわかっているので。
高田 ダミー紙面面白いよね! 普段の仕事は「間違いがないかもしれない間違い探し」だけど、絶対間違いがあるってわかっているから(笑い)。間違いは結構見つけられた?
栗原 いや、見つけられなかったものもありましたし、自信満々で指摘したけど「いやこれは大丈夫」と言われたものもありましたね。例えば付属の「付」とか。こざとへん(附)は(毎日新聞の表記では)必要ないんだって。
――高田さんはスポーツ紙の校閲をしていたということですが、違いはありましたか?
高田 そうですね……。やっぱり一般紙はいろいろな話題を見るので、経済とか国際関係の話題を読んで、全然知らない分野のことを調べなきゃいけないのは、スポーツ紙のアルバイト時代とは違うところかなって思います。ただ仕事の時間帯、夕方から深夜まで働くっていうのは一緒で、朝が弱い私はちょっとありがたい(笑い)。
一同 (笑い)
高田 とにかく一般紙の方が調べることが多くて……検索って結構難しいですよね。
一同 難しい。
高田 必要なデータを調べるためのね。パソコンがあっても、検索する能力が要るというか。
栗原 検索エンジンに入れる言葉によって、ヒットしてくるものが違ったりするので難しいですね。
高田 スポーツは結構記録が載っているホームページとかスポーツナビとかがあってわかりやすいけど、官公庁の記録とかってすごく探すのが難しい……。
土田 5分ぐらい探しても出てこなかったのに、急に一語を追加したり抜いたりしたらヒットしたりして。
高田 そうなると先輩の検索技術ってすごいなと。元々持っている知識も経験の積み重ねもあるだろうし。やっぱりすごいですね。
細かいところを意識しすぎて…
――校閲部に入ってみて想像と違ったことや戸惑ったことはありますか?
栗原 私は正直やること自体は本(校閲記者の目)をあらかじめ読んでいたので、大体こんなことをするんだろうなっていうのはわかっていて。でも想像していた倍以上は時間に追われていますね(笑い)。
高田 そうだよね、焦るよね(笑い)。
土田 元々校閲志望ではなかった立場だったから、入る前は本当に直しってあるのかなって不思議で、直すとしたら「てにをは」くらいかなって思っていたんですけど、全然違っていて私も驚いて(笑い)。一文にこんなに調べないといけない要素があるんだって。この文に出てくる年は合っていて、でもこの肩書は当時のまま本当に進んでいないのか、この固有名詞は合っているのか……そういうのがどれだけあるのかと。
限られた時間の中で、正確に細かいところまで意識してやっていかなきゃいけない。例えば私は細かいところを意識しすぎて、途中で主語が変わっているのに気が付かなくて訂正を出してしまったことがあって。ベテランの方がおっしゃっていた「木も見て森も見る」ことが大事って、本当にそうだなと思いました。1年くらいやってきて、やっとちょっとずつできるかなって。毎日やりがいはありますね。
高田 「木も見て森も見る」ってすごくいいですね。他の校閲の方の記事にもあった気がするんですけど、思ったよりも言葉の用法とかより事実関係をパソコンで調べる時間のほうが長いんだなって思いましたね。こんなにパソコン使うんだって。
栗原 そうですね。私もインターネットで(有名人でなくても)人名を調べたり他社の記事を見たりはしないんだろうなって思っていたんですけど、フル活用していますね(笑い)。
高田 インターネットめちゃくちゃ使うよね(笑い)。
栗原 昔はじゃあどうしていたんだろうって思いますね。
高田 本当にそれは思いますね。インターネットが無かった時の校閲の人は、やっぱり紙の資料とかを自分で持っていたりしたんですかね。
(傍聴していた新野信デスクから)
新野 僕はギリギリ(インターネットが)あった世代だけど、基本的にはインターネットがなくても社内で新聞記事のデータベースがあったので、それを使って過去記事を調べるっていうのは2002年くらいでもやっていましたね。あとは、情報調査部っていう図書館みたいなところが社内にあって、どんな資料があるかっていうのを把握していれば、そこに行って資料を見て、っていうのはやっていました。
それと切り抜きを一生懸命作っていましたね。プロ野球のテーブルや大相撲の千秋楽の星取表とかを貼り付けておく。そういうのをやっておくと、今でもインターネットで調べるより早く見つけられるので。あと切り抜いたら覚えるんだよね。あれ?っていう勘が働いて気付きやすくなるので、そういうのが結構役に立っていたかなと思います。
「切り抜き」する派? しない派?
――切り抜きとかってやりますか?
土田 私は結構やっています。
高田 私はあんまりやっていなくて、自分が訂正を出してしまった記事は戒めとしてノートに貼っていますね。
栗原 私はもう全部(ブラウザーの)ブックマークに入れてしまっているだけですね。でも紙の方が覚えるんだろうなって思いますね。
土田 私は画面見ると目が痛いから……(笑い)。
――例えばどういったものを切り抜いているんですか?
土田 特集面で自分が指摘して直ったところとか、問い合わせをしたけどそのまま残った部分とか。紙面に載った訂正で自分も間違える可能性が高いと思ったものはそれも切り抜いたりします。赤本直し(毎日新聞の用語集に基づいた直し)を自分が見落としてしまって、紙面に出てしまったものも切り抜いてあります。
一同 すごいですね……。
――年表とかは切り抜きをしておくと過去記事やインターネットで探すよりも早いかもしれないですね。私もやっています。
栗原 それはやったほうがいいですね……。ずっと検索する時に「経緯」とか「経過」とかの単語を入れて調べていました。
土田 記録とか、サッカーの試合のやぐら(トーナメントなどの表)はノートに貼ってたんですけど、年表は思いつかなかったですね。
栗原 手元にあったら絶対便利ですね。
高田 特集面の話で思い出したんですけど、他の人の直しを見るのって勉強になりますよね。入ったばかりの時に思いました。
栗原 こっそり見てしまいますね(笑い)。
土田 自分だと気付けなかったところとかね。
栗原 他の人が見つけた直しは自分も見つけられるのかな、と思って必死に調べたりしますね。
高田 1回自分が見て大丈夫だと思っていた記事を、ベテランの方が後から読んで直しを追加していた時は、ありがとうございます!って気持ちになりますね。
忙しさで読み方を変えることも
――読み方のルールは決めていますか? 線を引きながら読む、とか。
栗原 私はカタカナや英語の略語、固有名詞とかはもう一本一本、読んだぞって1文字ずつ消していきます。固有名詞とか事実関係とかに線を引いて、それを見終わったら最初に戻って「てにをは」とかを見るためにシューってまっすぐな線を引くっていうスタイルでやっています。
高田 2回読むの?
栗原 そうですね、2回読みます。
高田 時間がある時は確かに最後まで読んでから一回頭に戻って読みたいよね。
土田 私は時間ない時はとりあえず全部バーッて読んで、あとから調べるって感じかな。
栗原 時間ある時じゃないと厳しいですよね。
高田 私も線を引きながら読んでるんだけど、なんか漫然と線を引いてるなっていう時があって……。こないだ紙面の校閲をしてた時に、線を引いた跡はあるんだけど、自分がその時ちゃんと読んだ記憶が全くない、みたいな記事があって、いやほんとによくないんですけど……。
栗原 なんか雑な言い方ですけど、「自分がシャンプーしたか忘れる」みたいな(笑い)。
高田 あー、確かに(笑い)! 線は引いてあるけどちゃんと力を出してっていうか頭を使って読めてなかったなって。だから線を引くのも読んだ印として引いてるんだけど、漫然と引くようになっちゃだめだなって最近思いましたね。
――2回読むっていうのは、最初から全部調べて誤字脱字もつぶして、って全部やってからもう1回再確認で読むのか、それとも最初に通して読んでその後調べなきゃなところを調べるのか、どっち派ってありますか?
高田 私は前者ですね。1回目に読む時から全部気になることはつぶしたくて。そうすると全体が見えてないこともあるので、最後にもう1回確認で読むって感じです。
栗原 私も再確認派になりましたね。入社した直後は先に全部読んで、そこから事実関係を調べてたんですけど、それをすると絶対に間違っちゃいけないところを後回しにしてる感じがして……。先に事実関係とか絶対に間違っちゃいけないところを見るようになりました。
土田 私も結構最初の段階から全部つぶします。どうしても「ほんとにそうかな?」って思うとなかなか先に進めないことがあって。なので忙しい時はもう割り切って後者スタイルで、先に読んでから後で時間がある時に調べます。忙しさとかで(読み方を)変えることもあるかもしれない。
栗原 降版間際に出てきたものは一回素読みして頭に入れないと、(文章の流れとか)「何もわからない」みたいになってしまいますしね。
(後編は1月8日に掲載)