前回まで3回にわたり、職場に見学にいらした「LINE NEWS」の方々に、毎日新聞の校閲の仕事や部員の思いについてお伝えした内容をまとめました。
今回は番外編として、「LINE NEWS」の方々と話してびっくりしたことなどを取り上げます。
LINE NEWSに校閲部が新設されたと聞いた時、異動などの形をとって部署を設置したのかなと思いました。しかし実際は校閲をやりたい!と入社された方ばかりで、身を乗り出して私たちの話を聞いてくださったのが印象的でした。
ネット校閲の現場はいろいろと最先端のやり方があったりするのかなと勝手な想像をしていたのですが、なんとLINE校閲の方々は基本的にパソコンの画面上で校閲をするとのこと。我々もウェブサイトに載ったものは画面校閲をしますが、基本的には他の人が既に校閲した記事がアップされているので、一字一句目を皿にして……というほどではありません。
しかしLINE校閲の方は日に数百本もの記事を読むのだとか。おおかたは紙に印刷されたものを読んでいる我々とは目の負担が段違いなのでは……と一同恐怖におののきました。実際とても疲れるそうです。ただでさえ目が悪くなる仕事なのでちょっと心配です。
紙で原稿を読む毎日新聞の校閲作業
数字や事象が変わるものに注意、という話も出ました。
ちょうどこの日、台湾東部を震源とする地震の状況が刻一刻と変わっていました。新聞では「版」といって、印刷される時間が違うものによって記事を入れ替えていきますが、ネットニュースではそうはいかない。
一瞬一瞬で変わっていく数字、それを反映した見出しに、常に目を凝らしていなければなりません。死者数、負傷者数、行方不明者数などの数字を一字一字確認しながら、じっと光るパソコンの画面を見続けている――そんなLINE校閲の方々の姿を思い浮かべると、こちらの目も痛くなり……いやむしろ目頭が熱くなりました。
また、「数字コワイですよね」とのつぶやきがLINE校閲の一人の女性から。「コワイです」「本当にコワイです」と我々も応じました。「東証株価指数とか……」とさらに小さい声で言う女性。「見出しも……反発、反落、続落とかとか」と我々。うなずき合って、絆が生まれました。
新語はどこまで許容するか、という話も出ました。
極端なところで「マジ卍」などがありますが、新聞ではさすがに出てきません。記者の書くものはもとより、外部筆者の原稿であっても、あまりに使い方が分かりづらい言葉は直してもらうよう依頼することになります。
辞書にはまだ採用されていないけれど、市民権を得てきている…… といった言葉については、各新聞社・通信社、テレビ局の用語担当者が定期的に集まって行われる、新聞協会の「用語懇談会」で話し合われています。全社一斉に何かの基準を採用したりするわけではありませんが、他社の動向もみながら各社で方針を決めています。LINEはじめ各社のネットニュースでも校閲が一般的になれば、将来的に用語懇談会に加わることもあるのかも……?
そういえば聞き忘れて残念に思っていることもあります。私たちは日によって硬派(政治・経済・外電面など)・軟派(社会面など)と振り分けられるので、基本的に1日のうちに読む記事の傾向は変わりませんが、LINE校閲ではどのように記事を分担しているのか気になりました。もし硬派から軟派まで読まなければいけないのだったら、頭の切り替えが大変そうですよね。またお話を伺う機会があればぜひ聞いてみたいと思います。
今後ネットニュースの編集部でも校閲が機能し、ファクトチェックを行うことがあたりまえになっていけば、媒体ごとの信用度 の差は埋まっていくのだと思います。時代が変わりつつあるのだな、と感じる座談会でした。ネットニュースと新聞、媒体の違いはあれども同じ校閲の仲間として、これからも切磋琢磨(せっさたくま)していけたらいいなと思います。
それにしてもLINE校閲のみなさま、くれぐれも目の疲れには気をつけて。私もさっきまで細かい名鑑を校閲していて気分が悪くなってしまいました。読者のみなさま方には、こうすると目が休まるよ!なんて情報があればぜひ教えてください……とこの場を借りてお願いしたいです。
【斎藤美紅】