読者の方に「附属」はいつから「付属」になったのか、というご質問をいただきました。
紙面上はほぼ「付属」と統一されていますが、他の媒体やまちなかの表示では、「附属」という表記を見かけることがあります。そこで、少し調べてみました。
新聞など報道機関が「付属」としたのは「当用漢字補正案」が報告された1954(昭和29)年3月ごろ以降のことと思われます。
46(昭和21)年11月に内閣告示となった当用漢字表には「付」「附」両方が採用されていました。この二つの字はほぼ同じ意味だったため、過去には同じ字として通用していたこともあったようです。当用漢字の選定時も「意味が同じで音も同じというものは、どちらか一方だけにする」という方針があったので、「付」に一本化されそうでしたが、日本国憲法に「附」が使われているため結局両方採用になりました。
しかし、「附」と「付」は実態として同じ字として通用していたため、「付」だけで不自由せず、両字の使い分けが難しい場面もあったと思われます。そこで、当時の国語審議会で当用漢字の見直しが行われた際、削る字候補の28字に「附」が入り、54(昭和29)年3月に「当用漢字補正案」として報告されました。
報道各社はこの案を採用し、「附」を使わないこととして「付属」とし、今日に至っています。しかし、結局この「当用漢字補正案」は内閣告示になりませんでした。そのため「附」は現在も常用漢字にあり、政府の公用文などでは「附属」を使っているというわけです。
音訓は「付」に「フ・つける・つく」を採り、「附」には「フ」の音のみを認めています。教育漢字では「付」を採って,「附」は採っていません。教育漢字に「附」がないこともあり、文化庁は
「付属」と「附属」――「附」「付」は古くから通じて使われている。「付」は字画が少ないので,今日では、「付属」を採ることが望ましい
としています(文化庁「漢字表記の「ゆれ」について(報告)2」)。
日本新聞協会の新聞用語集も「付属」を採用していますので、報道各社はほぼ皆「付属」としています。
【松居秀記】