「直前に控える」という言い回しをどう感じるか伺いました。
目次
「違和感強い」が4分の3占める
期限切れを「直前に控える」――この言い回し、どう感じますか? |
違和感はない 7.6% |
違和感はあるが許容範囲 18.4% |
違和感が強い。「目前に控える」などとしたい 74% |
「言い換えたい」との意見が圧倒的に多くなりました。「目前」と「直前」、いずれも「めのまえ」という意味を含んでいるのに、どうして違和感がうまれたのでしょうか。
視点の違いが違和感生む
出題者は、この違和感が「どの立場から見るか」にあるのではないかと考えました。たとえば出題時に挙げた「期限切れ直前の食べ物」と「期限切れ目前の食べ物」という例では、時間軸上の「期限切れ」という点Aから見て過去にある食べ物が「直前」で=上の図、
食べ物から見て未来にある点Aが「目前」と言えると思います=下の図。
「期限切れ/直前の食べ物」「期限切れ目前/の食べ物」と文章を分ければ伝わりやすいでしょうか。
上記のように考えると、「期限切れを直前に控える」とした時の違和感の正体がはっきりします。「控える」は時間軸上で現在より後に起こることを指すため、過去にあるモノを指す「直前」はおかしいですね。対義語の「直後」や、現在から見て未来に点Aがあることを表せる「目前」が適当です。
辞書の語釈では足りない場合
辞書で語釈を調べていて難しいなあと思うのですが、語釈には読み方によって解釈が分かれるものが意外とあります。例えば今回出てきた「控える」の語釈は「空間的・時間的に近い所にある」(広辞苑)、「距離的・時間的にすぐ近くにある」(明鏡)などがありました。「後」とは書いていないのです。人がすぐ横で待機している場合なども「控える」と言えるため、その言葉が持つ意味をできるだけ多く書き込もうとすると、ひとつひとつを詳細に説明するのは難しいのかもしれません。
辞書だけでは判断が難しい言葉は、やはり今回のアンケートのようにたくさんの人の意見を聞いてみたくなります。職場でも、同僚同士の「この言葉はこういう使い方だと思うんだけど、どう思う?」という会話は日常茶飯事です。今回のまとめを書くに当たっても、考えを整理するのに同僚に話を聞いて回っています。言葉は人と人とのやりとりの中でこそ認識の違いが際立つもの。普段は黙々と原稿に向かっていますが、一人で仕事はできないのだと思い知らされます。
(2021年04月03日)
「直前」と「目前」、いずれも「めのまえ」という意味を含んでおり、時間軸という視点で見ると「ある時点より前に自分(主体)がいる」という意味になります。たとえば「期限切れ直前の食べ物」「期限切れ目前の食べ物」ならばいずれもOK。しかし、「控える」と続くとなると、「直前」ではなんだか違和感がありました。
「ある時点より前に自分がいる」という意味では、確かに自分(と食べ物)は期限より前に存在しているのですが、「控える」を使う場合には、期限と自分との関係が変わるようです。期限の方が今いる時点より後にあるということ、すなわち「直後」にあるというイメージが強くなります。
一方、「目前」の場合は「目前に控える」でも、自分が期限より前にいるという印象を持ち、自然に感じられます。一見同じ意味を持つように思える二つの語ですが、場合によっては一方は使えなくなってしまうのがおもしろいところです。
(2021年03月15日)