読めますか? テーマは〈潮〉です。
目次
海潮
かいちょう
(正解率 59%)海水または海水の流れ。「海潮音」は上田敏の訳詩集。「山のあなたの空遠く/『幸(さいわい)』住むと人のいふ」(山のあなた)などは今でも愛唱される。上田敏は100年前の1916年7月に没した。
(2016年07月19日)
選択肢と回答割合
かいちょう | 59% |
うなしお | 23% |
うみうし | 19% |
潮煮
うしおに
(正解率 73%)魚介類を煮て塩で味付けした吸い物。「潮汁」ともいう。または、魚介類の塩味の煮物。タイなど白身魚が多い。夏の関西ではハモも使われる。
(2016年07月20日)
選択肢と回答割合
うしおに | 73% |
しおに | 20% |
ちょうしゃ | 6% |
潮路
しおじ
(正解率 60%)海流の道筋。約3万年前に日本人の祖先が大陸から黒潮を横切って琉球列島に至った航海を、草舟で再現するプロジェクトが進行中だ。
(2016年07月21日)
選択肢と回答割合
しおじ | 60% |
うしおみち | 20% |
ちょうろ | 20% |
高潮線
こうちょうせん
(正解率 44%)満潮が極限に達した水位の時の海岸線。高潮は「たかしお」と読めば台風などに伴う別の現象を表す。仲裁裁判所は、中国が人工島を造成した南沙(なんさ)諸島の七つの岩礁は「島」ではなく、人が住めない「岩」か、高潮時に水没する「低潮高地(ていちょうこうち)」と認定、中国の権益を認めなかった。
(2016年07月22日)
選択肢と回答割合
こうちょうせん | 44% |
たかしおせん | 53% |
たかちょうせん | 4% |
◇結果とテーマの解説
(2016年07月31日)
この週は「潮」の字を使う言葉を集めました。「海の日」にちなむと同時に、最近のニュースも意識しました。
「高潮」は普通「たかしお」と読みますが、音読みも「最高潮」という形ではおなじみですね。ただそれ以外の音読みは珍しい。それが、南シナ海・南沙諸島をめぐる仲裁裁判所の記事で突如「低潮」とともにキーワードになりました。この国際裁判で、国連海洋法条約第13条「低潮高地」という条文がクローズアップされたのです。
低潮高地とは、自然に形成された陸地であって、低潮時には水に囲まれ水面上にあるが、高潮時には水中に没するものをいう。低潮高地の全部又は一部か本土又は島から領海の幅を超えない距離にあるときは、その低潮線は、領海の幅を測定するための基線として用いることができる。
そして今回問題になった所は「低潮高地」であり「島」とは違うという判断がされたわけです。では「島」の定義はというと、第121条に「自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるものをいう」とあります。ここでいう「高潮」とは一般的にいう「満潮」とどう違うのでしょう。どうも同じことらしいので、それなら「たかしお」という別の意味の読みもある「高潮」は避けた方がよいと思うのですが、専門的には「高潮線」「低潮線」などの形で多用されているのが実態です。
さて、今回の正解率はその「高潮線」が最低で「潮煮」が最高でした。潮煮には「潮汁」と同義で汁物とするほか、読んで字のごとく煮物とする解釈もあるようです。ただ煮物としても魚介類のだしの染み出した塩味の汁はおいしそうです。
「海潮」は今月が上田敏没後100年ということからの出題です。「海潮音」はカール・ブッセ「山のあなた」などの訳詩で有名ですが、ここではテーマに沿って「ボドレエル」の「悪の華」から「人と海」の一節を紹介します。
こころ自由(まま)なる人間は、とはに賞(め)づらむ大海(おほうみ)を。
海こそ人の鏡なれ。灘の大波(おほなみ)はてしなく、
(中略)
げにも非命と殺戮(さつりく)と、なじかは、さまで好もしき、
噫、永遠のすまうとよ、噫、怨念のはらからよ。岩波文庫より
「海潮音」出版は1905年、日露戦争の日本海海戦の年です。この詩を訳した時にその海戦が上田敏の頭にあったかどうかは知りませんが、「どうしてそんなに殺戮を好むのか」という戦争への懐疑がこめられていると思うのは考えすぎでしょうか。
「潮路」は、「3万年前の航海」を再現するため沖縄県の与那国島から西表島へと草舟で渡ったというニュースが契機です。結局、自力ではたどり着けなかったのですが、柳田国男の「海上の道」を思い出した人も多かったのではないでしょうか。愛知県・伊良湖岬に滞在中、漂着したヤシの実を見つけたことから、はるか昔に日本人の祖先が渡ってきた海上の道へと考えが及んだということです。
この話を東京に還って来て、島崎藤村君にしたことが私にはよい記念である。今でも多くの若い人たちに愛誦せられている椰子の実の歌というのは、多分は同じ年のうちの製作であり、あれを貰いましたよと、自分でも言われたことがある。
角川ソフィア文庫より
詩人と学者の幸福な交流の結晶である詩「椰子の実」は、80年前の1936年に歌がつき、国民的愛唱歌となります。ちなみにその年の7月31日に、幻の1940年東京五輪開催が決定。しかし、美しい詩や音楽、スポーツがふみにじられる時代がすぐそこに来ているということを私たちは知っています。
そして今、南シナ海などでは、波が逆巻き危険水域に至っています。何年か後に、海が再び人々の夢や希望をのみこむ殺戮の舞台とならなければいいのですが――。