「おやじ」を漢字で書くならどう表記するか伺いました。
目次
「親父」が3分の2、「使い分ける」が3割弱
父親や年配の男性を指す「おやじ」。漢字で書くなら、どう書きますか? |
親父 67.9% |
親爺 3.1% |
親仁 0.3% |
意味により使い分ける 28.6% |
新明解国語辞典8版の新設の子項目「親爺ギャグ」を見たことをきっかけに、皆さんに伺ってみた「おやじ」の漢字表記ですが、やはり最多は「親父」で3分の2を占めました。一方で3割近くの人が「使い分ける」を選択。新明解も項目としてはまず「親父」の表記を載せているのですが、「―ギャグ」には「親爺」を当てたところに面白さを感じています。
丁寧に「おやじ」を説く新明解
新明解が載せる意味は大きく分けて三つ。男性に対する呼称であって、指す相手は①自分の父親②他人の父親や中年以上③お店の主人や職場の長に当たる人。表記については②③は「親仁・親爺とも書く」、①の一部は「老爺」とも書くと言います。自分が年配になって父親が老境に入ったら「老爺」となるということでしょう。要するに、自分の父親には「親父」が主だが、それ以外には「親仁」「親爺」を使ってもよいということです。
しかし新明解は、単に使い分けを意識しているという以上に「おやじ」の説明に情熱を傾けています。一見して他の辞書類よりも説明が長い! 同じような判型・組み方の新選国語辞典(9版)が5行で済ませているところを、子項目も合わせて22行かけて説明しています。
新明解は「おやじ」が単に年齢を問題にして使われる言葉ではないとも付け加えます。[運用]の説明にいわく、②について「発想・趣味・好みなどに若さが感じられないという意を含意して用いられることがある。例、『盆栽なんて、ひと昔前はおやじのすることだったね/おやじギャグ』」。「おやじギャグ」は子項目があるのに用例も載っているという丁寧さですが、ここでは平仮名書き。ちなみに7版の盆栽のくだりは「盆栽なんて、おやじのすることだよ」でした。8版になって盆栽はおやじくさくない趣味として認識が改められたようです。
表記の使い分けの説明も新明解のみ
ところで「おやじギャグ」という言葉を採録している辞書は既に複数見られます。表記は「親父ギャグ」(大辞泉2版、広辞苑7版、大辞林4版)、「親爺ギャグ」(三省堂国語辞典7版)。これら4点の辞書はいずれも「おやじ」については「親父・親仁・親爺」の三つの表記を挙げているのですが、「―ギャグ」については見解が分かれました。語釈としては「おもに中高年の男性が言うだじゃれ」(三国)など大同小異なのですが。
三国は表記の使い分けについて特に説明をしておらず、ここに踏み込んでいるのは、見た範囲では新明解だけでした。新明解は、父親を指す場合は「親父」が専ら使われるとしていることもあって、広く中年男性を指す場合にはあえて「親爺」を選んだのでしょう。単に表記の例を挙げるのではなく、用例として示すのは心意気とでも言うべきでしょうか。もちろん「親父ギャグ」が間違いになるわけではありませんが、興味深い選択だと思います。
常用漢字表に従えば仮名書きに
個人的な印象としては、一般的には「親父」、年の行っている人には「親爺」、店の主人などを指す場合には「親仁」を使いたいように感じます。多くが「親父」を選んだ一方で、使い分けるという人も一定数いた今回のアンケートの結果は、実に納得のいくものでした。
もっとも、毎日新聞の表記としては、常用漢字表に「爺」が入っておらず、「父」「仁」いずれも「じ」という訓が認められていないため、「おやじ」と仮名書きすることになります。もし表記に迷うことがあるなら、仮名書きもおすすめします。
(2020年12月01日)
いずれも表記としては伝統的なものですが、どれがよく使われるか伺ってみました。 きっかけは先ごろ毎日新聞に載った「新明解国語辞典」の最新版(8版)の広告。
10月16日は #辞書の日 です。『ウェブスター辞典』を編集した米国の辞書編纂者、ノア・ウェブスター氏の誕生日(1758年生まれ)であることがその由来です。
そんな今朝、毎日新聞に #新明国 の広告を掲載いたしました。
三省堂は辞書を作って未だ130余年。辞書を編む歴史は未来へと続きます。 pic.twitter.com/Cy86VkMidm
— 考える辞書『新明解国語辞典』11/19第八版発売! (@shinmeikoku) October 16, 2020
アップになった「親爺ギャグ」という項目が目を引きました。
語釈は「〔おもに中年男性が〕気の利いたことを言おうとして発する言葉遊び。多くの場合かえって顰蹙(ヒンシュク)を買う。『許してちょうだい』を『許してちょんまげ』という類」……何だかわけもなく切ない気持ちになります。
ともあれ気になったのは表記です。新明解7版の「おやじ」の項目は、見出し語の表記としては「親父」。ただし「中年以上の男性」や「商店の主人や職場の責任者」を指す場合は「親仁・親爺」とも書くとあり、意味により使い分けているようにも思われます。11月19日に発売される8版も親項目は「親父」になっていそうですが、書き分けぶりが気になります。ちなみに毎日新聞の表記は、常用漢字表に基づき原則として「おやじ」と仮名書きです。
(2020年11月12日)