頭にかぶる部分がついている、写真の人が着ているような服の呼び方について伺いました。
目次
新聞などは「パーカ」、世間は「パーカー」
頭にかぶる部分(フード)が付いている、写真の人が着ているような服。どう呼びますか? |
パーカー 79.7% |
パーカ 7.9% |
フーディー 12.4% |
「パーカー」が約8割と大多数でした。一方で多くのメディアが使用している「パーカ」は1割に届かず、最近一部で使われている「フーディー」を下回りました。
現代国語例解辞典5版(小学館)は、「パーカ」について「元来、イヌイットの用いる毛皮製の防寒服をいう」「本来はイヌイットの言葉で発音と表記はパーカ」と記しています。また「パーカ」「パーカー」の表記について、国立国語研究所の日本語コーパスで「パーカー」が72%と多数を占めたことを紹介し、「世間ではパーカーが一般的」と判定しています。
今回の結果と同じ傾向です。現代国語例解辞典の分析では「ほとんどの辞書の見出しもパーカであるため、雑誌でもパーカが79%」なのだそうですが、新聞も含め活字メディアで主流の「パーカ」は一般には浸透していると言えないのが現状のようです。表記については、日常的には「パーカー」とするのも普通の書き方と言えるでしょう。
辞書は「パーカ」=「防寒用コート」?
ところで、辞書で表記を確認していたら、「パーカ」の語釈にひっかかる点を感じました。
ヤッケ、アノラックなどフード付きの上衣、コートなどの総称。
現代国語例解辞典5版(2016年)
ずきん付きの、ひざまでのコート。防寒用。
新明解国語辞典7版(11年)
防寒・防風用に着る、ゆったりしたフードつきの上着。アノラック・ヤッケなど。
明鏡国語辞典2版(10年)
「ヤッケ」などは最近あまり聞かない言葉ですが、日本国語大辞典2版の説明は「フードのついた防風・防水・防寒用上着。登山・スキー・釣りなどに用いる。アノラック」。
上に挙げたものに限らず、現時点では多くの辞書が、パーカについて「ヤッケやアノラックのようなもの」に重点を置いた説明となっています。これは英語の「parka」の使われ方を踏襲したものと考えられますが、そのためか、日本で「パーカ(ー)」と呼ばれることが多い、今回呼び方を伺った服にはあまり当てはまらないような感じを受けます。
日本語の「パーカ(ー)」の使われ方
そもそも「パーカ(ー)」という言葉はいつごろから日本語に入り、どのように使われてきたのでしょうか。
日本国語大辞典には1978年の小説にある「アークティック・ダウンパーカ」という用例が載っていますが、広辞苑が「パーカ」を採録したのは91年の4版から。毎日新聞の過去記事でも初出は91年で、ファッションの紹介記事でした。その後しばらくは「ウインドブレーカー」とかっこ書きの説明がついていたり、「フード付きパーカ」と書かれていたりと、まだなじみの薄い言葉であったことがうかがえます。90年代の記事では「ヨットパーカ」と書かれているものも多く、描写からナイロンなどでできた防風・防水生地の薄手の上着と推定できるものが目につきました。
それらと違うと分かる「パーカ」が記事に多く出てくるのは2000年ごろから。「綿のパーカ」「コットンニットのパーカ」や「被災地へパーカ・トレーナー類を送った」という記述がみられ始め、02年にはユニクロがベビー服の本格販売を始めるという記事の中で「フリースパーカ」が出てきます。このころには「アウトドア用ではないパーカ」が当たり前のものになっていたと考えられます。
英語では「フーディー」と呼ばれるが
英語では今回呼び方を伺ったような服は「フーディー」と言い、日本でもファッション業界などではこの呼称が使われているようです。今回これを選んだ人は1割強と一定数いたものの全体からみれば少なく、今のところ新聞で使うのはためらわれるのですが、中型の辞書では採録するものも出始めています。
大辞林は19年の4版に「パーカ」の項目へ誘導する空見出しで「フーディー」が入りました。「パーカ」の方も「フードつきのゆったりしたジャケット。かぶり型のものが多い」と、フーディーを意識した工夫が感じられます(前の版も同じ)。また、デジタル大辞泉は「フーディー」の項目があり「フード付きのトレーナーやジャケットなど。パーカ」と説明しています。
日本語では「パーカ(-)」=「フードがついている服」のようになっているのではないかと思われますが、部屋着になりそうな「フーディー」からアウトドアウエアである「ヤッケやアノラック」まで意味は広く、人によって「パーカ(-)」でイメージするものにズレが出る可能性もありそうです。「パーカ(-)」と書く際には、実際にどんな服なのか、素材や着方などがきちんと伝わるように意識した方がよいと考えます。
(2020年11月13日)
写真のような、フードがついている服は日本では一般的に「パーカー」と呼ばれることが多いようです。ただ、元の英語ではこの言葉、つづりは「parka」で語尾は伸ばしません。そのため新聞は「パーカ」と書きますし、多くの辞書の見出し語もそうなっています。
日本語としては「パーカー」が主流のような気もしますが、最近では大手量販店「ユニクロ」が商品表示で「パーカ」表記を使用しているなど、「パーカ」も見かけるようになりました。
一方で、英語圏では写真のような服は「フーディー(hoodie,hoody)」と呼ばれるそうです。そのため、ファッション誌や輸入した服を扱う店などではそちらの呼称を使うこともあるようです。
「パ―カー」が多いと予想していますが、実際にはどれくらいの割合になるのでしょうか。
(2020年10月26日)