「ウグイス嬢」という呼び方について伺いました。
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「避けなくてよい」が6割超
選挙運動で、車のスピーカーから候補者をアピールする女性を指して言う「ウグイス嬢」。この言い方、どう感じますか? |
いい感じがしないので避けたい 36.7% |
あまりよくないが許容できる 36% |
問題ない 27.3% |
選挙カーなどから候補者をアピールする女性を指して言う「ウグイス嬢」という表現について、「問題ない」とする回答は3割弱。「避けたい」と「よくないが許容できる」にほぼ二分された残り7割弱は「問題あり」と考えていることになります。
一方で、「避けなくてよい」という人(「問題ない」と「よくないが許容できる」の合計)は6割を超えます。すっきりしない結果ではありますが、報道機関でも扱いが分かれている現状を反映しているともいえそうです。
使われなくなってきた「〇〇嬢」
今回取り上げたきっかけは、2019年秋以降の国会議員の選挙違反報道です。選挙運動の際、法定上限額以上の報酬を支払ったという相手について、毎日新聞ではほぼ一貫して「車上運動員」と表記してきたのですが、一部に「ウグイス嬢」という表現を使用する新聞・テレビがあるのが印象に残っていました。
職業などの後につける「嬢」は、その職についている女性であることを示す言い方で、辞書の用例には「受付嬢」「案内嬢」「アナウンス嬢」などが挙がっています。しかし、これらについて同じように男性だけを指していう言葉はありません。また例えば「受付係」「案内係」「アナウンス係」などとすれば性別にかかわらず使用できます。多くの人に情報を伝達するメディアが、「〇〇嬢」といった表現を使うのは、女性であることをことさら強調し特別視するもので、避けるべきだという考え方が主流になってきています。
伝わりやすく、不快ではない?
それでも「ウグイス嬢」が根強く使われる場合があるのは、伝わりやすさという理由が大きいのではないかと考えられます。
毎日新聞をはじめ、「ウグイス嬢」の使用を控えているメディアの多くが代わりに「車上運動員」などとしていましたが、これでは具体的にどんな仕事をしているスタッフのことか伝わりにくいことは否定できません。なんとか分かりやすくしようと「選挙カーに乗ってアナウンスする車上運動員」と長い説明をしている記事もありましたが、「ウグイス嬢」なら一言でイメージがわくでしょう。
また、「車上運動員」や「アナウンス係」は仕事や立場を表すだけですが、「ウグイス嬢」と言うと、業務内容に加え「声が美しい」という意味合いが含まれそうです。そのため、当事者を含めて、その呼称を不快に感じない人も多いのかもしれません。
女性だけの仕事ではありません
選挙運動ではウグイス嬢と同様の仕事をする男性を「カラス」というそうです。「ウグイス嬢」のようには浸透しておらず、採録している辞書はわずかですが、女性限定の仕事ではないというのは確かでしょう。
また、一般にウグイス嬢と呼ばれることが多かったプロスポーツのスタジアムでのアナウンス係なども、今では男性が担当することが増えており、性別にかかわらず「スタジアムDJ」などと呼ばれるようになっているようです。「ウグイス嬢」とあえて女性に限定した言い方は、実態にもそぐわないと言えます。
イメージしやすく、いまのところ許容されやすい表現だとしても、やはり今の時代の用語としてはおすすめできないと考えます。
(2020年07月24日)
「ウグイス嬢」は、選挙の運動員だけでなく、野球場などで場内アナウンスをする女性についても使われることがあります。言うまでもなく、そのきれいな声を鳴き声の美しいウグイスにたとえているわけです。
毎日新聞では、「〇〇嬢」という言い方が女性であることをことさらに強調した表現で好ましくないと考え、「ウグイス嬢」も「アナウンス係の女性」などとすることにしています。同様にこの表現を避けている社は少なくないようです。
一方で、最近の国会議員の選挙違反事件では、他社の報道で「ウグイス嬢」の表現もしばしば見られました。避けなくてよいと考えている社もあるようです。
報道機関によって扱いの異なるこの言葉、みなさんはどう感じるでしょうか。
(2020年07月05日)