読めますか? テーマは〈春の花〉です。
目次
辛夷
こぶし
(正解率 58%)モクレン科。花の色も形もハクモクレンに似ている。「しんい」と読むとモクレンなどから作る漢方薬の名。アイドルグループ「こぶしファクトリー」(追記:2020年3月に解散)に「辛夷の花」という歌がある。
(2017年04月10日)
選択肢と回答割合
からしな | 24% |
こぶし | 58% |
しきみ | 18% |
小米花
こごめばな
(正解率 33%)バラ科。ユキヤナギ、シジミバナ共通の別名。小さな白い花がびっしりと咲くのを米に見立てた。ユキヤナギとシジミバナは似ているので別名も同じになったのだろう。
(2017年04月12日)
選択肢と回答割合
こごめばな | 33% |
こでまり | 55% |
こよねばな | 12% |
花韮
はなにら
(正解率 77%)花は白か薄い青の星形で6弁。別名「ベツレヘムの星」。葉はニラに似る。南米原産の帰化植物で園芸用だが道端に自生しているのも見かける。
(2017年04月14日)
選択肢と回答割合
かき | 6% |
はなにら | 77% |
はならっきょう | 17% |
◇結果とテーマの解説
(2017年04月23日)
この週は「春の花」でした。
桜が特別にもてはやされますが、他にもさまざまな美しい花々が咲き乱れる春です。
東京ではコブシはとっくに散ったと思いますが、北国では今盛りでしょうか。
平岩弓枝さんの小説「ベトナムの桜」はこう始まります。
瀬戸内の海に浮かぶ高取(たかとり)島は、このあたりを航海する人々にとって花の名所であった。
春浅い頃には断崖の上に咲く紅梅白梅の匂いが風に乗って漂って来る。太い枝を海上にまで伸ばしている松樹の奥には辛夷(こぶし)の花も姸(けん)を競う。
毎日新聞日曜版に連載していた当時、読者から「瀬戸内海の島にコブシはあるのか」という疑問が出され、たじろいたことがあります。知らなかったのですが、四国ではコブシは自生しないとのこと。高取島というのはどうやら架空の島のようですが、もし瀬戸内の島にコブシはあり得ないのなら、いくら小説とはいえ不適切な記述になります。
校閲としては調べが付かなかったので、編集者を通して筆者に伝えました。後にこれでよいという結果が伝わり、単行本でもそのままになっています。
結果には影響しなかったとはいえ、小説の校閲でもそういう事実関係をおろそかにしてはいけないと思い知らされた一件でした。
「小米花」は出題者の好きな花であるユキヤナギの別名として歳時記に載っています。しかし国語辞典ではシジミバナの別名とも書いてあります。となると、歳時記に「小米花」で載っている句が本当にユキヤナギのことなのか分からなくなります。まあ、だからといって句の趣がなくなるわけではないのですが。
なお、誤答の多かった「こでまり」は「小手毬」「小粉団」などと書き、これも春にたくさんの白い小さな花をつけますが、名の通りまりのように丸くまとまっていますのでユキヤナギとの区別はつきます。
「花韮」はいわゆる帰化植物で、ブローディアともいわれます。「広辞苑」ではヒガンバナ科とされますが、「大辞泉」や「日本国語大辞典」ではユリ科となっています。「日本大百科全書」(小学館)ではブローディアの項に「他の属に移されたものが多く、現在でも学説の定まらないものがある」とありますので「科」も定まっていないのでしょうか。
慎重を期して、出題時の解答欄で「科」を記すのはやめました。動物でもそういうことがよくあります。分類を示すときは複数の資料にあたることが必要なのです。
個人的には道ばたでよく見かけ、長く気になっていた花なのですが、図鑑でみても名前が分かりませんでした。先日インターネットで調べてようやくハナニラと分かりました。さっそく「知ってる? この花の名前」と妻に聞くと「知ってるよ、ニラでしょ」と事もなげに答えられました。本当はニラとは違うのですが、教えて感心されることを期待していた者としては「ちぇー」。
それはともかく、ニラと違って古来日本にある花ではないので今のところ季語にはなっていないようです(「韮の花」は夏の季語)。でも花の美しさに舶来とそうでないものの差があるわけではないし、いずれ花韮が歳時記に載ってもおかしくないのではないでしょうか。