「VTR」という略語についてどう感じるか伺いました。
目次
大多数の人が使用を受け入れる
録画映像のことを「VTR」と呼ぶのはおかしいですか? |
問題ない 44.9% |
違和感はあるが、許容範囲 38.6% |
おかしい。別の呼び方を使う方がよい 16.5% |
「問題ない」とした人が最多で4割強。「許容範囲」の人も合わせると8割超が使用を受け入れるという結果になりました。物としてのビデオテープを見ることは減りましたが、言葉としての「VTR」は今後も使われていきそうです。
ビデオ「テープ」レコーダーだが…
回答から見られる解説でも記しましたが、「VTR」は「ビデオテープレコーダー」の略語です。辞書によっては「テレビジョンまたはテレビ-カメラからの映像・音声を、記録・再生する装置。ビデオ-デッキ」(大辞林4版)と説明するのみ。要するに記録媒体としてテープを用いる録画・再生機器ということですから、それを文字通りに受け止めるなら「VTRを見る」といっても四角い機械を見ることになってしまいます。
もっとも、「ストーブにあたる」という表現が「ストーブの火にあたる」ことであるのと同様に「VTRを見る」というのも一種の比喩で、機械ではなく録画映像を見るのだと考えることに問題はありません。ただ気になるのは、現在では記録媒体としてビデオテープを使う場合がほとんどないことです。2000年代の中ごろには、ハードディスクやDVDが録画媒体の主力になっていました。VTRの「T」が消えたわけですが……。
独立して生き延びる「VTR」
NHK放送文化研究所の「放送研究と調査」2010年12月号に「『VTR』は生き残る?」という記事が載っています。「ビデオテープレコーダーそのものが姿を消し始めた」としつつ、次のように述べます。
物が使われなくなると、通常はそれを表す言葉も次第に使われなくなり、死語になってゆく。ビデオテープレコーダーという言葉も、すでに古びた語感を持つようになった。しかしVTRは、これは何の略?という質問がネット上に出るほど元の意味は忘れられつつあるのだが、それでも使われている。
「VTR」という言葉は元の形の「ビデオテープレコーダー」から離れて、録画された映像のこととして独立して使われるようになってきたということです。国語辞典では大辞泉2版が「補説」として「〔録画された映像を意味する場合は〕ビデオテープに限らず、DVDや他の媒体に保存された動画映像全般をさす」と説明しています。
また、三省堂現代新国語辞典6版は「VTR」の項目の②として「テレビ番組の中で流される、別途収録された映像。V」という説明を載せており、これが今般もっともよく使われる「VTR」の説明になっているかもしれません。「V」は「『VTR』の略称」(大辞泉2版)と説明する辞書もありますが、「テープ」の「T」を避けるための発明と見えます。もっとも現状では「VTR」がまだまだ使われているようです。
録画映像の意味で今後も使われそう
今回のアンケートでは8割超の人が「VTR」の使用を受け入れるという結果になり、今後もこの言葉が新聞紙面などで使われることにも問題はないでしょう。一定以上の年齢の人からすれば昔からなじんだ言葉ですし、それ以下の年代の人は何の略語か分からないなりに録画映像の別称として抵抗なく理解しているようです。「筆箱」や「げた箱」のような言葉の最新バージョンとして、物が消えても生き延びてゆく可能性が高そうです。
(2019年10月29日)
この言葉はまだ使えるのかな、と思うものの一つに「VTR」があります。主にテレビ番組の中で、スタジオなどからの映像とは別に録画したものを指して言うことが多いようです。毎日新聞でもテレビ番組の紹介の際などにしばしば使われます。
ある程度以上の年齢の人なら説明不要とは思いますが、「VTR」は「ビデオテープレコーダー」の略語です。国語辞典の説明を見ると「ビデオカメラやテレビから送られてくる画像・音声を磁気テープに記録し、のちにそれを再生する装置。また、それによって再生された画像・音声。ビデオ」(明鏡国語辞典2版)。要するに、ビデオテープに録画する機械や、その再生映像が「VTR」と呼ばれてきたわけです。今となっては「ビデオテープ」は昔の道具。若い人だと、ビデオテープもVTR機器も見たことがないという人もあろうかと思います。
とはいえ、以前アンケートで取り上げた「歯磨き粉」のように、物としては見かけなくなっても名称は残るものはあります。「VTR」についても大辞泉2版の「補説」は、映像に関して言う場合には「ビデオテープに限らず、DVDや他の媒体に保存された動画映像全般をさす」としています。筆の入っていない「筆箱」やげたのない「げた箱」のように、テープ抜きの「VTR」も生き延びてゆくものでしょうか。
(2019年10月10日)