数を数える際の表記について伺いました。
目次
漢数字と洋数字「いずれも使う」が最多
ひとつ、ふたつ、みっつ……数字を使うならどう書きますか? |
一つ、二つ、三つ 32% |
1つ、2つ、3つ 21.2% |
上のいずれも使う 38.7% |
いずれも使わない 8.1% |
最も多かった回答は、漢数字と洋数字の「いずれも使う」という人で4割近くを占めました。校閲のツイッターに寄せられたコメントでは「縦書きでは漢数字、横書きでは洋数字」という声もあり、「いずれも使う」を選んだ人はそうした使い分けを意識してのことかもしれません。
文化庁の調査では洋数字派が圧倒
今回の質問のきっかけは文化庁の「国語に関する世論調査」で同様の質問があったことです。質問の趣旨は「官公庁などが示す『お知らせ』や広報等の文書に使う表現として」、「一つ、二つ、三つ」と「1つ、2つ、3つ」のどちらが良いかというものでした。
公表された結果を改めて記すと、「一つ、二つ……」を選んだ人が23.6%で、「1つ、2つ……」を選んだのは66.3%。洋数字が良いという人が3分の2を占め、漢数字派を圧倒しました。詳細な報告によると「国語への関心がある」という層でもその傾向に変わりはなく、「ひとつ、ふたつ」という場合に洋数字を使う方が良いとするのは一般的な考え方だと示す結果になっています。
今回のアンケートではもう少し漢数字寄りの結果になったのですが、多くの場合横書きされるお役所の公用文のスタイルを前提にしたならば、「いずれも使う」という人も多くは洋数字の側になびいたかもしれません。
「公用文の書き方」で数字の書き方も議論に
ところで国語世論調査のこの質問は、興味本位で問われたわけではないようです。文化審議会の国語分科会は現在、公用文の書き方について小委員会で議論している最中。現在の公用文作成についての取り決めは1952年に出された「公用文作成の要領」というもので、さすがに60年以上を経て、見直しが検討されるのは自然なことと言えるでしょう。
文化庁のウェブサイトから見られる文案(たたき台)には「数字の使い方」という項目があります。大原則は「横書きでは算用数字、縦書きでは漢数字を使う」というもの。そのうえで「横書きであっても、語の構成用語として用いられる数などは、漢数字を用いる」とあり、「常用漢字表の訓、付表の語を用いた数え方」は漢数字を使う語として例示されています。「一つ、二つ、三つ…」「一人(ひとり)、二人(ふたり)…」など。この伝でいくと、横書きでも「ひとつ、ふたつ」は漢数字を用いることになるのですが、世論調査の結果は洋数字支持が多数になってしまいました。
毎日新聞用語集はこの「たたき台」と同様に、「ひとつ、ふたつ」などは縦書きでも横書きでも漢数字を用いることとしています。これらは漢字の訓読みであるという立場からです。数量を表す場合には洋数字を用いるのが原則ですが、「一つ」から「九つ」までという限定的な数については別扱い。上記の「たたき台」の方針はおおむね納得のいくものであり、公用文でも「ひとつ、ふたつ」などには漢数字を使う方針を維持してほしいと考えます。
表記は多様だが、一定の方針が必要
一方、新聞社でも「1つ、2つ……」のような表記を用いる社はあります。数字の「1」「2」には決まった音訓というものがありません。「1つ」を使う社は、これで「ひとつ」と読めると多くの人が考えるなら問題ない、という考え方を採っているのでしょう。送りがなで数字の読み方をコントロールできるという考え方は漢文訓読にも通じるものがあり、それはそれで日本らしいと言うべきかもしれません。もっとも洋数字を用いる社でも、「今回の問題の一つは……」のような場合には漢数字を用いており、表記のコントロールに苦慮している面もあるようです。
アンケートの結果としては、単純に漢数字派と洋数字派を比較した場合には漢数字を使うという人が多かったのですが、「いずれも使う」という人が最多であることを見ても、数字表記はすっかり多様になっていることがうかがえます。とはいえ一定の方針はある方がよく、もし実際の書き方に迷うという場合には、議論されている公用文の書き方や、新聞社・通信社などの方針を参考にしてみてもよいのではないでしょうか。
(2019年11月26日)
先ごろ発表された文化庁の2018年度「国語に関する世論調査」の結果で、「えーっ」と思ったものがありました。官公庁などが使う表現として「一つ、二つ、三つ」と「1つ、2つ、3つ」のどちらが良いか――この問いに、3分の2の人が「1つ、2つ、3つ」の方が良いと思うと答えたことです。
毎日新聞では「一つ、二つ」などと書くことにしています。「ひと(つ)」という読み方は漢字「一」の訓読みと考えているからです。しかし、用語のルールとして「1つ」を採用している新聞社もあり、日本新聞協会加盟社でも見解は分かれています。
もちろん、洋数字の読み方に規範的なルールは存在しませんから、「1つ」と書いて「ひとつ」と読んでいけない理由があるわけではありません。数量を表す場合はすべて洋数字ということにするなら、ルールとしてすっきりするのも理解できます。
しかしなんだか釈然としないのは、出題者が毎日新聞のルールになじみ過ぎたせいか。ここはひとつ、皆さんの意見を改めて伺ってみたいと思います。ここでは漢数字派が盛り返す気もするのですが、どうでしょうか。
(2019年11月07日)