「外国人材」という呼称についての受け取り方を伺いました。
目次
「印象良くない」が6割超す
この春から受け入れが拡大した外国人労働者を「外国人材」と呼ぶのは… |
呼称の印象が良くない 62.5% |
実態以上に美化している 13.6% |
特に問題ない 23.9% |
6割以上の方が「印象が良くない」と感じていました。逆に「美化している」ように感じる方は少なく1割強。問題ないと考える方は2割程度しかおらず、予想以上に引っかかる表現であるようです。
「人材」は良い意味のはずだが…
「人材」を辞書で引くと、「才知ある人物。役に立つ人物」(広辞苑7版)などとあります。対して労働者は「労働力を資本家に提供し、その対価として賃金を得て生活する者」(同)。単に雇用されている立場を示す「労働者」よりも「人材」と言った方が高く評価していることになるはず。「人材(財)開発部」という組織を持つ企業は多く、政府も「プロフェッショナル人材事業」を運営したり「クールジャパン人材育成検討会」を開催したり。「人材」という言葉自体にマイナスの意味はありません。
にもかかわらずこれほど「外国人材」の印象が良くないのはなぜか。
ツイッターでは「外国人材」を「外国・人材と読むべきか外国人・材と読むべきか」というコメントがありました。「外国・人材」と意識されているのであれば、辞書の説明からしてイメージは悪くないのではと思います。ですから「外国人・材」と捉えて、「鋼材」「断熱材」のような道具になぞらえた表現だと感じる方が多いのでしょう。ならば「外国からの人材」「外国人人材」などと表現すれば、悪い印象はある程度消せるかもしれません。
「労働力」としか見ていないことが問題
ただ同じコメントには「本来移民として捉えるべき人たちを労働力としか見ていない様が表れていて印象が悪い」とも。産経新聞のウェブサイトでは、大行寺の住職を務める英月さんがインタビューに対し「外国人材という言葉には、違和感を覚えます。人ではなく、物としてみていますよね。当てにできる、使える、日本人が嫌がる労働を安い賃金でしてくれる。そういう思惑が透けていて、失礼です」と答えています。
このように「失礼」な「思惑」が読み取れてしまう方にとって、外国人労働者の受け入れ拡大政策とともに出現頻度の増えた「外国人材」に染みついた悪い印象は簡単に拭い去れるものではないでしょう。「役に立つ」というプラスイメージであるはずの言葉が、「受け入れ側にとって都合が良い道具」を表すマイナスイメージの言葉に逆転してしまっている可能性もあります。
受け入れるならば相応の呼び方が必要
そうだとすれば、小手先の変更ですませるのにも限界があります。受け入れた外国人と「共同体のメンバーとしてともに暮らし、地域社会を作っていく覚悟が求められる」(3月31日毎日新聞社説)ことを踏まえ、「安い賃金で都合よく使える労働力」のような文脈で配慮なく「外国人材」という言葉を使っていないか省みることが必要だと感じます。
「移民の受け入れ」は否定しつつ「労働力の受け入れ」を進めようとする政府の姿勢が、言葉についても変な影響を与えている面は否定できないようです。もっとも、実際に外国から入ってくる人たちと、仕事や生活の場で接するのは私たち自身。「外国人材」のような言葉はまず横におき、受け入れる中で実感に即した言葉を使ってゆくことが求められていると考えます。
(2019年06月25日)
今年4月に改正入管法が施行され、外国人労働者の受け入れが拡大されました。これに関連して「外国人材」という言葉が新聞でも多く見られるようになりました。
5月にあった日本新聞協会の用語懇談会総会ではこの表現について議論され、「良い印象が持てない言葉だ」という意見が複数出ました。使用を極力避けている放送局もあるとのこと。本来「外国人人材」となるべきところを省略しているから差別的に聞こえるのでは、という意見もありました。
しかし一方で、「人材」というと単に「労働者」というよりも有用であるように感じる、との見方も。だとすると、実際は単純労働に従事する人に「人材」という言葉を使うことによって、実態よりも良いイメージを与えてしまうという問題もありそうです。
出題者は何も考えずに読み流していましたが、読み手によって良く捉えられることも悪く捉えられることもありそうな言葉です。皆さんにはどう感じられるでしょうか。
(2019年06月06日)