スピードを上げることを表すとき、「加速/加速化」「する/させる」をどう組み合わせるか伺いました。
目次
「化」なしが9割占める
「改革を○○ことが必要です」。一番しっくりくるのは? |
加速する 25.4% |
加速させる 64.6% |
加速化する 4.5% |
加速化させる 5.6% |
結果は「加速させる」が6割を超え最多。「加速する」を含めると9割となり、「化」は必要なしと判断した人が大多数を占めました。出題者の感覚と一致して一安心です。
「加速する」より「加速させる」の比率が高かったのは、「改革」という施策についての話であるため、その人為性がより明確になる「させる」の形が多く選ばれたのではと推測します。
「加速」自体が変化の意味含む
回答の際の解説で触れたように、「加速化」の「化」が過剰だと感じられるのは、「加速」自体にスピードが変化するという「化」の内容が含まれているからでしょう。
例えば「砂漠化」「弱体化」「民営化」を見てみれば、それぞれ「砂漠」「弱体」「民営」だけでは、何かが変化することを意味しません。「化」をつけて初めて、「砂漠」「弱体」「民営」といった状態に変化する(させる)意味を持ちます。そこが「加速化」と異なる点です。
「化」は強調表現という見解も
というわけで、状態の変化を表す語にさらに「化」は不要。結論出ました!となればよかったのですが……。明鏡国語辞典(2版)の「化」の項には「『入園料を無料にする/無料化する』『新制度の定着を図る/定着化を図る』などでは、『~化』のほうが<変化する・させる>の意を強調した表現となる」という解説がありました。
「定着」も状態の変化を表す言葉です。上の「加速」の理屈からいくと「定着化」は過剰なはずですが、明鏡はこれを強調表現と捉えていました。例文では、自然に定着していくようにするというだけでなく、より積極的に定着を促すということになるでしょうか。
そうすると「加速化」も一律に排除できないのかもしれません。毎日新聞の記事でも、「(日露の)平和条約交渉を加速化させると一致した」「(人手不足対策について)政府で議論を加速化しなければならない」といった使い方が見つかりました。これらは、なかなかうまく進まない課題について現状を打破しようという思いを込め、あえて強調の「化」を入れていると言えなくもありません。
過度な強調表現は支持されず
ただ変化を過度に強調して訴えてしまいがちなのは、政治家とマスコミに共通の悪い癖。アンケートで「加速化」の支持率は大変低かったわけですし、力みすぎて過剰な「○○化」を乱発すると違和感を持たれかねないことは認識しておいたほうがよさそうです。
(2019年03月05日)
辞書によると「加速する」は自動詞・他動詞どちらでも使え、「速度を加えること。また速度が加わること」(三省堂国語辞典7版)などとあります。だとすると、「改革を加速する」は他動詞として使う場合で、改革の速度を上げるということ。「改革を加速させる」は自動詞として使う場合で、改革の速度が上がるようにするということ。どちらも問題なさそうです。
「加速化する」「加速化させる」はどうでしょう。接尾語の「化」は、「〔作用が加わって、形・性質などがそのようなものに〕なること。また、そうすること」(同)。ならば「改革を加速化する」は、改革を速度が上がった状態にするということ、「改革を加速化させる」は、改革の速度が上がっている状態になるようにするということでしょうか。
理屈はつけられそうですが、まどろっこしい気がします。「加速」自体に状態が変化するという内容が含まれているので、それに「化」をつけるのが原因なのではと思われます。
しかし新聞でも、「女性活躍の流れを一層加速化する」「改憲論議を加速化させる」など、「加速化する」「加速化させる」はよく見かける表現です。出題者としては「化」を取った方がすっきりすると感じるのですが、「加速化」派はどれぐらいいるでしょうか。
(2019年02月14日)