昨年の男子ゴルフ、日本ツアー賞金王で最優秀選手は韓国の裵相文(ベ・サンムン)選手でした。ある日の原稿で、裵ではなく裴という字が入っていました。違いが分かるでしょうか。私はしばらく原稿を凝視していました。分かりやすいように大きくしてみましょう。裴(左)は「長い衣のさま」という意味で、裵(右)はその異体字です。固有名詞でなければ、異体字は使わないようにしていますが、韓国では漢字で表記する場合、裵が使われているので、それに合わせているのです。ペ・ヨンジュンさんの「ペ」も裵になります。
公式記録はアルファベット表記
毎日新聞では韓国人や中国人などの名前を漢字で表記しますが、中には普段あまり目にすることのない漢字もあるため、注意が必要です。ロンドン五輪でも多くの選手名を目にすることでしょう。ただ、インターネットで公式記録を確認すると、選手名は各国・地域の発音に合わせた英語表記になっています。例えば、2010年のバンクーバー五輪フィギュアスケート女子で金メダルの金妍児(キム・ヨナ)選手(韓国)は「Yu-Na Kim」、ロンドン五輪で活躍が期待される陸上男子110メートル障害の劉翔選手(中国)は「Liu Xiang」という具合です。
バンクーバー五輪ではこんなことがありました。韓国のショートトラック男子には李政洙選手と李昊錫選手がいて、2人とも1000メートルに出場し、メダルを獲得しました。公式記録では①「Jung-Su Lee」②「Ho-Suk Lee」となっています。①が李政洙(イ・ジョンス)選手、②が李昊錫(イ・ホソク)選手です。団体競技では、同じ姓の選手がいることもあり、ますます注意が必要です。
五輪でも、まずは名前の読みを確認、そして漢字の表記をチェックし、さらには写真があれば本人かどうかも確認……といった作業に追われると思います。名前が間違ってしまったら、せっかくの大記録を報道する紙面も台無しになってしまいます。漢字1文字にも目を光らせて、選手とともに校閲記者も闘っているのです。
【尾形美保】