「小やみ」という言葉の受け止め方について伺いました。
目次
「小降り」と同様に捉える人が多数派
雨が「小やみ」になった――どんな状態ですか? |
雨は降っているが弱くなった 60.5% |
また降り出しそうだが、雨は降っていない 34% |
上のどちらについても言う 5.5% |
「雨は降っているが弱くなった」という「小降り」に近い意味で捉える人が6割を占め、多数派でした。国語辞典の説明も辞書によって違いがあり、幅のある使い方のされる言葉と考えられます。
「小降り」の意味は“誤用”?
国語辞典で「小やみ」を引くと、まず「物事の動きがしばらくやむこと。雨や雪などが少しの間降りやむこと。おやみ」(日本国語大辞典2版)のように説明されます。「おやみ」が古い言い方のようで、日国の「こやみ」の用例が明治時代からなのに対し、「おやみ」は平安時代の後撰和歌集の用例が載っていますが、今はもっぱら「こやみ」が使われます。
三省堂国語辞典(8版)は「小やみ」の項目で「①しばらくやむこと。おやみ」とした上で、「②〔俗〕小降り」とも記しています。弱い雨という意味で「小やみ」を使うのは俗用だということです。8版は2022年発行ですが、これが2014年の7版だと「②〔あやまって〕小降り」としています。言葉の新しい用法などに寛容というイメージがある三国に“誤用”認定されるとは、これは本格的に間違いなのかと思ってしまいそうですが……。
「ちょっとやむ」というニュアンス
新明解国語辞典(8版)では「しばらく小降りになる(やむ)こと。おやみ」と説明しています。「やむ」よりも「小降りになる」が前に出ており、それが本義だと言っているようです。最近(2020年)の版だから新しい用法を載せているのかな、と思って職場にある同辞典の初版(1972年)を見ると、「おやみ」が書いていないことを除けば説明は同じです。新明解は50年以上前から、「小やみ」を「小降りになること」として認めているわけです。
広辞苑(7版)の説明を見ると「(雨や雪などが)しばらくやむこと。ちょっとやむこと。おやみ」とあります。「しばらくやむ」は誤解の余地がありません。ある程度の時間にわたって雨や雪が降らないことです。一方の「ちょっとやむ」というのはどういうことなのでしょうか。この場合の「ちょっと」は程度が小さいことを表すとみられますが、それは時間なのか雨の強さなのか。
時間と考えると「しばらく」との重複感があります。より短い時間を表すとすれば、それはやんでいると言えるかどうかが疑わしくなってきそうです。程度と考えるなら、雨はある程度やんできたが少し降っている、という受け止め方になるのではないでしょうか。職場にあった古い版(2版、1969年)にも同じ説明が載っていました。広辞苑も近年の用法として「ちょっと」を採用したということではなく、やはり50年以上前から「しばらくやむ」だけではカバーしきれないニュアンスがあることを認めていたと考えられます。
どちらにも使われるのが実情
インターネットで検索してみると、「小やみ」を「小降り」のように使うのは間違いだとする情報もありますが、実態としては相当前から「弱く降っている」という使い方も認識されており、今回のアンケートでも多数派を占めました。「弱く降っている」「やんでいる」の両様に使う言葉と捉えて差し支えないでしょう。
インターネット上の図書館「青空文庫」を見ても
「或る朝から急に雪が降りだした。そして一日ぢゆう小止みなく降つてゐた」
(堀辰雄「恢復期」1931年)
「小止みになつた雨足を縫つて歩き出すと」
(野村胡堂「錢形平次捕物控 青い帯」1941年)
といった具合にどちらの使い方も見られます。今回のアンケートでは「どちらについても言う」とした人は5%ほどしかありませんでしたが、他の人が使う「小やみ」については、いずれの場合もあり得ると考えるのがよいでしょう。
(2024年07月08日)
長雨の季節。雨に降り込められて外出もままならず、小やみになったタイミングで買い物に出る――なんてこともあるかもしれません。しかしこの「小やみ」はどういう状態を指すものでしょうか。
日本国語大辞典は「こやみ」の項目で「物事の動きがしばらくやむこと。雨や雪などが少しの間降りやむこと。おやみ」と説明します。これに従えば、雨は降っていないということです。「小(こ)」は接頭語として、程度が小さいことを表すことがあります。雨なら「小降り」といえば弱く降っている様子を指しますが、「小やみ」の場合は時間的な小ささを指すという考え方のようです。
しかし他の辞書には「しばらく小降りになる(やむ)こと」(新明解国語辞典)のような説明もあり、これによれば「小降り」と同じ意味でも使うことになります。実際、このような使い方も多いのではないかと感じています。皆さんはどう受け止めるでしょうか。
(2024年06月24日)