「塩対応」という言葉について伺いました。
目次
「分かるが、使わない」人が多数派
首相が答弁で「塩対応」――カギカッコの中、意味は分かりますか? |
分かるし、使う 31.7% |
分かるが、自分では使わない 60.7% |
分からないし、使わない 7.6% |
「塩対応」という言葉について、「分からない」とした人は1割に満たず、新聞に出ても意味が通じないのではないかという懸念はあまり必要なさそうでした。もっとも「使う」とした人は3割程度で、首相の答弁に対する反応としては軽さを感じる人もあるようです。
アイドルの対応ぶりに由来
「塩対応」とは「客やファンなどに冷たい対応をすること。そっけない受け答え。AKB48メンバー島崎遥香の、ファンへのそっけない対応に使われたことば」(米川明彦「平成の新語・流行語辞典」東京堂出版、2019年)。AKBメンバーだった「ぱるる」こと島崎さんのそっけない対応がファンにむしろ喜ばれていたことを思い出す人も多いでしょう。
この言葉は2014年のユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされています。それから10年ほどにして一般にも浸透したことは、今回のアンケートの結果からもうかがえます。ちなみに14年の流行語大賞は「ダメよ~ダメダメ」と「集団的自衛権」。後者はともかく、前者については「懐かしい」という印象を持つのではないでしょうか。もっとも、それでこそ流行語らしいと言えるのかもしれませんが、「塩対応」は新語として定着が進みました。
国語辞典も徐々に採録
「塩対応」については、最近は国語辞典でも説明を載せているものがあります。
〔新〕そっけない態度。愛想のない対応。「アイドルがファンに塩対応をする」
(明鏡国語辞典3版)
[俗に、芸能人などの]無愛想な対応。[対]神対応
(三省堂現代新国語辞典7版)
(「塩」の項目で)〔俗〕そっけないこと。「塩対応」
(三省堂国語辞典8版)
「そっけない」「無愛想」にまとめられます。今回の質問のきっかけになったのは、野党の代表が首相の答弁について「ゼロ回答とは言わないが、塩対応だ」とした発言でした。新語・俗用とはされるものの、一般の国語辞典にも載るようになったことを考えれば、政治家であろうと口頭のやり取りで使うこと自体は不思議ではありません。首相答弁の中身の乏しさに思わず口をついて出たのでしょう。
ただし、校閲センターのツイッターには「意味は分かるが、首相などの答弁に対して使うべきとは思わない。国会軽視の姿勢を適切な表現で批判すべきだ」というコメントも寄せられました。答えるべき内容をきちんと答えない答弁に対して使うには軽いと感じられたのだろうと思います。言葉の由来を考えると、そのように感じる人がいるのも無理からぬことかもしれません。「塩対応」が分かりにくい表現というわけではありませんが、まだ新語であることを踏まえて使う必要はありそうです。
(2024年02月26日)
首相の国会答弁に対し、野党が「『塩対応』批判」という見出しが付いた記事。毎日新聞の見出しにも「塩対応」が出る日が来たか!と変な感慨を覚えましたが、「意味が分からなくて辞書を引く人がいたら困るな」とも感じました。
三省堂国語辞典(8版)は「塩」の項目で、俗用として「そっけないこと。『塩対応』」という説明を載せます。明鏡国語辞典(3版)は「塩対応」で項目を立てて「そっけない態度。愛想のない対応」と説明しています。ほかは三省堂現代新国語辞典(7版)にも項目がありますが、いずれも2020年以降に改訂された版で、最新の辞書の一部にしか載っていない意味だと言えます。
「塩対応」は元々、アイドルのファンに対する振る舞い方について言われたもののようで、10年ほど前から見かけるようになりました。今回の例は野党の代表の発言から取った見出しですから、中年世代もよく使うようになったとは言えるかもしれませんが、「塩対応(そっけない対応)」のような説明が必要だったろうか、とも思いました。この言葉、どれほど浸透したものでしょうか。
(2024年02月12日)