「やわらかい肉」は漢字なら軟? 柔? 「イチゴのかたさ」は硬? 固? 堅?――人を迷わす言葉の用法について皆さんにお答えいただいてきた「ことばの質問」が、「校閲記者も迷う日本語表現」として書籍化されました。ぜひ手に取ってご覧ください。
「閣僚」に首相は含まれますか? 政治部の原稿で出てきたこの言葉について、後輩から質問を受けました。内閣のメンバーを指して使われる言葉が「閣僚」ではありますが、「幕僚」といえば総司令官を補佐する参謀のような役目を指します。「閣僚」は内閣の首長である首相も含めて使うものかどうか、皆さんはどう感じるでしょうか――。
「ことばの質問」ではこんなふうに、言葉に関するさまざまなことについて、読者の皆さんに伺ってきましたが、これをまとめた本が出版されます。「校閲記者も迷う日本語表現」(毎日新聞出版、1760円)。ちょっと気になる言葉や表現を取り上げた質問・解説の数々に加え、直しゲラの写真も載せたコラムを多数織り込んでいます。9月15日発売です。ぜひ手に取ってご覧いただければと思います。
以下に目次をご紹介します。
目次
第1章 この言葉、使っていますか?
①「おかしい」と感じつつも使われる「いつぶり」
②「並々ならない」はおすすめできず
③ネガティブには使いにくい「群を抜く」
④「前倒す」と言いますか?
⑤「固定概念」は使えるか
⑥要りますか?に「大丈夫です」は答えになっているか
⑦震災を「迎えた」――感情を含む表現と新聞校閲
⑧「原爆の日」「原爆記念日」「原爆忌」…8月6日の呼び方は
⑨なお定まらない「あの戦争」の呼び方
第2章 新たな言葉が定着していく
①書き言葉ではやはり「すごくうれしい」
②ついに辞書にも採録「斜め上」
③「こだわり」を認める時代
④「ほぼ」と「ほぼほぼ」どう違う?
⑤新3文字熟語? 「熱視線」は定着したか
⑥「真逆(まぎゃく)」使いますか?
⑦使う? 「ひとごと」に対して「自分ごと」
⑧定着進む「共感、感動」の「刺さる」
⑨今後も続きそうな「義実家」問題
⑩「見える化」は定着も、使用には要注意
⑪「ラグい」――2割弱は「使う」と回答
第3章 どこまで直す? 「馬から落馬」的な言葉
①文字にすると違和感が増す「違和感を感じる」
②「犯罪を犯す」―重複は罪なりや?
③「楽観視」の「視」は必要?
④「過半数を超える」を直すべきか
⑤「高い注目を集める」どこが変?
第4章 表記に迷う〜あなたならどう書きますか?
①刺し身はやっぱり「お造り」か
②仕切りは「パーテーション」と言う人が多数派
③表記の定まらない「sustainable」
④「ほかならない」は仮名書きが最多
⑤「すてき」どう書く
⑥「令和」の「令」どう書く?
⑦「イチオシ」は漢字なら「推し」が多数派
⑧浸透しつつある比喩的な「立て付け」
第5章 意味で書き分けてみましょう
①政権の「せいとうせい」は「正統性」としたいが…
②エンジンは「吹かす」? 「噴かす」? 「蒸かす」?
③「光景」と「風景」 災害の様子に合うのは?
④「柔らかい肉」が「軟らかい肉」より圧倒的に人気
⑤ほどよい「かたさ」には「固さ」がおすすめ
⑥おろそかにしたくない「おざなり」と「なおざり」の差
⑦「食料危機」か「食糧危機」か
⑧「不用」と「不要」の微妙な関係
第6章 どう数えますか?
①蛇口の数え方
②受け止め方が分かれる「3000人台を突破」
③「○倍高い」には違和感あり
④好ましくないことが「○日ぶり」…違和感ある?
⑤「一両日」は今日から? 明日から?
⑥「初老」は何歳?
⑦「妙齢」の年ごろは?
⑧「弱冠○歳」ってどれくらい?
第7章 コロナ下の言葉
①使用を避けたい「自粛させる」
②ウイルス相手には「戦い」より「闘い」が好まれる
③「人流」の語、やはり抑制すべきでは
④新しい言い回し「有観客」
⑤浸透進む新しい「リアル」
⑥違和感強い「病床があふれる」
⑦「買い占め」とも「買いだめ」とも言い切れず
⑧「コロナ後」は「収束後」が大勢
コラム
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・アイコンの性別
・「照れ笑う」は“強引な動詞化”
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