常用漢字の「郎」に1画増えた「郞」は旧字です。新聞では旧字や異体字は一部を除き使用せず、常用漢字表に基づいた字体や後述する「印刷標準字体」を使用しています。別に見逃しても間違いにはなりませんが、今日はちょっと意識したい字体の話です。
印刷標準字体は2000年、当時の常用漢字に含まれない1022字について表外漢字字体表で定められました。新聞や書籍などの印刷物の字体は、基本的にこれに準じています。例えば「郞」の3行前にある「繡」が印刷標準字体です。
しかし日常生活では、右下の部分が「米」になっている「繍」の字体もよく目にすると思います。こちらは「簡易慣用字体」といい、表外漢字字体表の1022字中、22字については簡易慣用字体の併用が認められました。ただ毎日新聞では原則使用していません。
ところが2010年の常用漢字改定で、簡易慣用字体のうち「曽」「痩」「麺」が新たに常用漢字に追加されたことで、従来の印刷標準字体「曾」「瘦」「麵」は旧字になりました。このため、同じ「麦」の部首でも常用漢字の「麺」は「麦」が、表外字の「麴」は「麥」が標準の字体となりました(「麹」は簡易慣用字体)。こうした複雑な字体のルールが正しく運用されているか確認するのも校閲の仕事の一つです。
字体差ではなく「デザイン差」とされる漢字の違いもあります。うっかりするとプロでも見逃すのが「俱」と「倶」。「具」の縦棒2本が下の横棒とつながっているかどうかの違いで、通常はどちらを使用しても差し支えないのですが、毎日新聞では「俱」を使用。字が小さくて分かりにくい時は、パソコンの「ページ内検索」などを使って確認しています。