「圧巻」という言葉の意味について伺いました。
意味が曖昧になっている「圧巻」
五輪でたびたび登場する「圧巻の演技」。この「圧巻」、どんな意味? |
見ると圧倒されるようだ 37.6% |
ほかの演技と比べて優れている 38.6% |
とにかくすごい 23.8% |
辞書による説明は「書物の中で最もすぐれた部分。他にぬきんでた詩文。転じて、全体の中で最もすぐれた部分」(広辞苑7版)。
これに近い二つ目の選択肢を選んだ人と、一つ目の「見ると圧倒されるようだ」を選んだ人が、4割弱でほぼ同率でした。
三省堂国語辞典は第7版(2014年)で「圧巻」について、俗用としながら「思わず圧倒される見もの・聞きもの」という説明を加えました。正直いって、新聞でもそのような使い方と思われるものが多数あります。
野球でよく見かける「圧巻の投球」。「最後を圧巻の投球で締めた」などであれば、「その部分が試合の中でも特に良いピッチングだったんだろうな」と思って済ますことができますが、「11三振を奪いながら球数はわずか103と圧巻の投球」となるとどうか。試合の中で良かった部分はその「ピッチング全体」だったのだろう、と考えて自分を納得させようとしますが、こうした場合は「圧倒的な投球」とする方が素直ではないかと思います。
ほかにも「マグロが市場いっぱいに所狭しと並んだ様は圧巻」というのは「……並んだ様は壮観」などとした方がよさそう。もはや単に「すごい」という意味で使われているような印象も受けます。4分の1ほどの人が「とにかくすごい」という選択肢を選びましたが、実際の使われ方が曖昧なので、それも自然なことかもしれません。
(2018年03月13日)
「圧巻」の意味は「書物・劇・楽曲などの中で、最もすぐれている部分。また、勢ぞろいしたものの中で最もすぐれているもの」(明鏡国語辞典2版)。相対評価ということです。「圧巻の演技」は「全体の演技の中で最も優れた演技」と理解するのが本来の使い方に沿います。
「圧巻」の由来は、中国の科挙(昔の官吏登用試験)において最優等者の答案をいちばん上にのせたところから、としている辞書が大半です。しかし、毎日新聞本紙の「校閲発」で取り上げた際には、「漢辞海」所収の別の説を紹介しています。それによると、漢籍には科挙に関する記述はなく、宋代の詩論書「潜渓詩眼」にある、唐の杜甫の詩を評価して巻首に置いたという話が初出だということです。
(2018年02月19日)