「5月3日はひな祭り」「大阪県岸和田町から東京都江戸川村に引っ越した」。こんな文章をAIチャット「ChatGPT」に「校閲して」と頼んでみました。その結果は。そして「AIは人間の校閲の仕事を奪いますか?」という質問へのAIからの回答は――。
「ChatGPT」をご存じでしょうか。アメリカのOpenAIが開発した基本無料のAIチャットで、質問を打ち込むと、膨大なインターネット上のデータを基にAIが詳細な回答をしてくれます(現状では2021年9月までの情報を基にしているそうです)。その回答能力が非常に優れていると今話題沸騰中なのですが、恥ずかしながら筆者は、つい最近まで存在すら知りませんでした。
ところで、AIと校閲の関係はとても微妙です。優れたAIが登場して人間よりも早く正確に調べることができるようになれば、いずれ人間の校閲業が衰退する恐れもあるからです。そんな恐怖心を抱きながら、果たしてChatGPTに校閲ができるのか、いろいろ試してみました。
目次
しっかりした知識と自然な文章に驚く
ChatGPTがどのくらいの知識を持っているのかを確認するため、まず初めにいくつか基本的な質問をしてみましょう。(画像はクリックすると大きく表示されます)
正解。
正解。冥王星の解説まであるなんて、しっかりしています。
これも正解。これは人間では即答できない……。
なるほど、基本的な知識は持ち合わせていることが分かりました。しかも驚くことに文章がちゃんとしています。どこにも「機械らしさ」が感じられません。
フグ田サカナって……誰!?
次は、少し複雑な質問を送ってみました。
だいたい当たっているなあと感心していたら、なんとサザエさんに娘の「サカナちゃん」がいて、タラオは小学生、ワカメはOLになっていました。架空の未来ではありえそうな話ですが、弟のカツオも出てこないので指摘してみました。
最初よりは良くなりましたが、ワカメの名字はフグ田になっているし、ちょくちょく突っ込みどころもあります。どうも細かい調査は苦手なようです。
文脈理解は苦手
ではいよいよChatGPTに実際の校閲をさせてみましょう。
誤字脱字を認識する能力はあるようです。ただ、ひな祭りが3月3日であることは指摘してくれず、「勝手きて」を「勝手に買って」と解釈してしまいました。
地名の間違いはしっかり直してくれました。ただ、2003年はうるう年ではないので2月29日はありません。
2月29日がないことは分かっていても、文章を解析して「おかしい」と指摘することはできないようです。
あの名勝負を全否定
次はちょっと質問の仕方を変えてみましょう。
これは完全なフェイクといえるでしょう。2006年の夏の甲子園決勝といえば、延長引き分け再試合の末、早稲田実業が4-3で駒大苫小牧に勝った、歴史に残る名勝負です。
ここまで校閲的な視点からChatGPTにいろいろ質問してきました。ある程度の誤字脱字は拾ってくれましたが、細かい内容の調査はまだ苦手なようです。フェイクを含む膨大なインターネット上の情報から回答しているので、それら一つ一つを吟味する能力は発展途上なのでしょう。校閲に利用する場合、現段階ではあくまで参考程度にとどめた方が無難かと思います。ただ、文章の作成能力は非常に高いです。頼めば簡単な小説も作ってくれるので、興味の湧いた方はぜひ試してみてください。
人間の校閲は消える?
最後に、我々校閲が気になる質問を投げかけてみました。
とても希望に満ちた回答でした。AIは人間の敵ではありません。人間ならではの知能や感性を大事に養っていけば、将来AIと人間の校閲は共存していくことができるかもしれません。
【森憧太郎】