読めますか? テーマは〈蚕〉です。
蠶
答え
かいこ
(正解率 38%)「蚕」の旧字体。蚕の字は元々はミミズとして使われていて蠶とは別字だった。古くから蠶の略字として蚕が用いられていたことから、当用漢字に蚕が採用された。
(2014年05月26日)
選択肢と回答割合
天蚕糸蚕
答え
てぐすさん
(正解率 28%)ヤママユガ科のガ。これから取った糸は「てぐす」といわれる釣り糸になる。なお宮沢賢治「グスコーブドリの伝記」には「てぐす飼い」という言葉が出てくる。「てぐす」は糸ではなくそれを産する虫の意味で使われている。
(2014年05月27日)
選択肢と回答割合
あまごかいこ |
10% |
てぐすさん |
28% |
てんさんしさん |
62% |
給桑
答え
きゅうそう
(正解率 83%)カイコに桑の葉を与えること。皇后さまの年中行事。なお、桑(くわ)の音読み熟語は扶桑(ふそう)が有名。太陽の出る地の神木、または日本の別称だ。
(2014年05月28日)
選択肢と回答割合
きゅうくわ |
1% |
きゅうし |
16% |
きゅうそう |
83% |
繭糸
答え
けんし
(正解率 47%)繭と糸、または繭から取った糸のこと。また、そのように厳しく税を取り立てること。企業向けには減税を検討、国会議員の歳費削減はやめる一方、消費税は8%もつかの間、10%に増税する方向。国民は糸のように税金を吐き続ける。
(2014年05月29日)
選択肢と回答割合
繰糸場
答え
そうしじょう
(正解率 80%)繭から糸を取る工場。やり繰りの繰の音読みは操と同じくソウだ。世界遺産登録が確実になった富岡製糸場の繰糸場は中で見学ができる。一般語として「繰糸」ではなく「操糸」を採録する辞書も一部あるが、富岡製糸場に関し「操糸場」と書き誤らないよう要注意。
(2014年05月30日)
選択肢と回答割合
さいしじょう |
7% |
そうしじょう |
80% |
ねんしじょう |
13% |
◇結果とテーマの解説
(2014年06月08日)
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by Colegota |
この週は「蚕」がテーマでした。「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界遺産登録勧告が大きなきっかけであることはいうまでもありませんが、養蚕にとって重要な時期で、皇室でも「給桑」などの行事があることも意識しました。
その皇室の「御養蚕始の儀」の記事で蚕の数を「頭」で表記していました。チョウを「頭」で数えることもあるということは知っていましたが、蚕もそうだとは。「数え方の辞典」(飯田朝子、小学館)でも確かに「匹」とともに「頭」も挙げられています。注記として「人間にとって、貴重な昆虫として蚕を『頭』で数えることがあります」。ちなみに同書によれば、チョウは「頭」で数えることがあるのに、ガは「匹」でしか数えません。そのガの幼虫である蚕が「頭」というのも面白いですね。蚕は牛や馬並みに大事に飼育されていたという表れかもしれません。
その蚕の旧字体が「蠶」。共通部分が虫だけで似ても似つかぬ字ですよね。それもそのはず、本来は意味も読みも別の字だったのです。出題時にも記したように、蚕はもとミミズを表していたのですが、古くからカイコの略字として通用していましたから当用漢字に採用されました。同様に、もともと別字だったのに略字が本来の字と衝突したものに「藝」の略字「芸」があります。芸は本来ウンと読み、ある草の名を意味する字でした。
「天蚕糸蚕」は今回最も正解率が低くなりました。「てぐす」という言葉は知っていても「天蚕糸」という字と結びつかなかったのかもしれません。また「天蚕糸」だけでは「てんさんし」などとも読むため「天蚕糸蚕」としたことでなおさら難しくなったようです。ちなみにテグスと片仮名表記されることも多いため外来語のような印象がありますが、「唐音」からという語源説はあるものの少なくとも江戸時代からある日本語です。
「繭糸」の「繭」は「ケン」「まゆ」の音訓で常用漢字表に掲げられています。しかし「まゆ」はともかく一般的には音読みは常用されません。当用漢字時代はどうだったか知りませんが、訓読みだけにする選択肢もあったように思います。ちなみに富岡製糸場にある「東繭倉庫」「西繭倉庫」の繭は「まゆ」と訓で読みます。
しかし富岡製糸場の「繰糸場」は「くりいとば」とならず「そうしじょう」と音読み。この音が災いしたか、「操糸場」という誤植が大変目立ちます。全国には固有名詞として「操糸場」となっているところもあるかもしれませんが、そう記す資料も誤植の可能性があります。少なくとも富岡製糸場に関しては「繰糸場」が正しいことははっきりしています。まもなく正式に世界遺産登録が決まるでしょうが、その報道の際に間違いを繰り返さないよう気をつけたいものです。もちろん、富岡「製紙場」なんて単純な変換ミスも要注意。