「タイパ」という言葉について伺いました。
目次
4分の3は「分からない」
最近見かける「タイパ」という言葉――意味は分かりますか? |
分からないし、使わない 73.5% |
分かるが、自分では使わない 24.5% |
分かるし、自分でも使う 2% |
予想以上に「分からない」という人が多いと感じます。「タイパ」について「分からないし、使わない」とした人が全体のおよそ4分の3を占めました。「分かるが、使わない」とした人が4分の1程度で、「自分でも使う」という人はわずか2%。分からない言葉とは言い切れませんが、日常的に使われる言葉とは言えないようです。
現状では説明必須
「タイ焼きパーティーのことだな」というコメントが校閲のツイッターにやはり寄せられました。タコ焼きパーティーを「タコパ」と呼ぶなら「タイパ」の由来はタイ焼きに帰せられるのが自然というわけです。もっともこのコメントも、とぼけてみせただけでしょう。「タイムパフォーマンス」の略語が「タイパ」。「コストパフォーマンス」をコスパと略すのと同様です。
毎日新聞でも2022年になってから「タイパ」という語形を記事中に見かけるようになりました。映画を早送りで見るなど、本来の時間より短時間でコンテンツを消費することについて、「タイパを重視」といった形で使われます。基本的には「タイムパフォーマンス」という形を載せた上で「時間効率」のような説明付きです。今回のアンケートで4分の3が「分からない」と答えたことを考えると、説明は必須でしょう。
三省堂の、辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2022」で大賞に選ばれたのがこの「タイパ」でした。選考結果のサイトでは、三省堂の四つの国語辞典の編集部が書いてみた、「タイパ」の語釈を見ることができます。それぞれ「かけた時間に対しての効果(満足度)」「時間的な効率」「時間効率」「時間対効果」といった説明を挙げています。
(「今年の新語2022」については「毎日ことば」の中でもリポートしています)
世相を表す言葉
アンケートの結果からは、会話で使ってもパッと理解してもらえない可能性が高そうに思えます。要するに普段遣いの言葉とは言いにくい。ただし、ツイッターなど字数の制限があるSNSのような場所には向いているという印象も受けます。
「今年の新語」で挙げられていた、三省堂現代新国語辞典の編者による説明が「なるべく時間を掛けずに、なるべく多くの見返りを得たいという現代的な発想が根底にある」と触れていたように、この言葉は普段遣いの言葉というよりは、世相を映した言葉というべきかもしれません。消費者の可処分時間をコンテンツ産業が奪い合うというのが現代の一面であり、その中で消費者側が「タイパ」を追求するのはいわば必然です。そうした観点からは押さえておくべき言葉であるとは言えるかもしれません。
(2022年01月10日)
「タイムパフォーマンス」を略したものが「タイパ」である、とのこと。意味としては「時間効率」。「コストパフォーマンス」(費用対効果)を「コスパ」と略すのと同様に考えるべきでしょうか。▲「タイパ」が注目されたのは、映画の内容を短時間に詰め込んだ「ファスト映画」の動画を投稿したことについて、5億円という巨額の賠償を命じる判決が出たためでしょう。最近は動画なども早送りで視聴されるということの理由として持ち出されるのが「タイパ」重視の風潮だというわけです。▲毎日新聞での初出は2022年6月。新聞ではなかなかお目にかからなかった言葉です。ちなみに「タコパ」という略語もありますが、こちらの初出は2011年。「たこ焼きパーティー」を指して使われます。
(2022年12月12日)