スポーツ関係で使われる「戦犯」について伺いました。
目次
3分の2は「分かりやすい」と認識
団体スポーツで敗戦の原因と目される選手を「戦犯」と呼ぶことがありますが…… |
本来の使い方から外れており、おかしい 33.6% |
分かりやすいが、違和感がある 47.9% |
分かりやすく、問題ない 18.5% |
団体スポーツで敗戦した場合に、その原因として特定の選手を非難するために使われる「戦犯」。元々も意味の「戦争犯罪人」とは異なる使い方ですが、「おかしい」とした人は3分の1程度。3分の2の人はこの用法を「分かりやすい」と認めています。ただし、「問題ない」とした人は2割にも満たず、使用には留保が必要と言えそうです。
新聞でも80年代から用例あり
先ごろ行われたサッカーのワールドカップ。最終的に、日本代表の「戦犯」探しが取り沙汰されるような結果にはならなかったのは喜ばしい限りですが、1次リーグ第2戦でコスタリカに敗れた際には、SNSを中心にこの言葉が使われていたようです。毎日新聞の記事にも、選手のSNSに「戦犯」というコメントが書き込まれたとありました。
回答から見られる説明でも書きましたが、これは「戦争犯罪人」ではなく「敗戦の犯人」というほどの意味で使われる言葉です。毎日新聞の記事データベースをさかのぼると、1989年12月3日付で「参院選で自民党が惨敗して以来、“戦犯”とさえいわれた大蔵官僚」という例がありました。引用符付を付けて、本来の使い方ではないと示しているようです。スポーツではありませんが、「敗戦の原因を作った人」という意味で使われています。
スケープゴートではない
アンケートの結果は、3分の2が分かりやすさを認めています。こうした言葉を使うときには、敗北に加担したかに見える選手のプレーを犯罪的と捉えるからでしょうか。敗戦で傷ついた気持ちに根差す感情的な言葉としてみれば、本来の意味から離れるとしても、あえてとがめ立てするには及ばないのかもしれません。
一方で、本来の「戦争犯罪人」の意味がゆがめられるのは良いことではありません。これは敗戦側から出されるスケープゴートを指す言葉ではなく、捕虜や非戦闘員、また広く一般市民に対する残虐な行為を許さないという意思を込めて使われるべき言葉です。現に戦禍が市民を巻き込んでいる今時においては特に、スポーツに「戦犯」という言葉を使うことにはためらいを感じないわけにはいきません。
(2022年12月15日)
サッカーのワールドカップも始まりましたが、関連するネットニュースを見て「やっぱり出てくるなあ」と感じる言葉があります。「戦犯」です。国語辞典では一般に「『戦争犯罪人』の略」(岩波国語辞典8版)と説明されます。サッカーに戦争犯罪? この説明ではピンときません。▲三省堂国語辞典(8版)は「戦犯」の項目で「戦争犯罪(人)」に加えて「②〔俗〕団体競技で負けるなどの悪い結果をまねいた人」という意味を載せています。要するに「負けたのはお前のせいだ」と敗戦後に責められる人を指す言葉だということです。敗戦の犯人、という意味合いでしょう。▲しかし、むしろ味方側から責められるスポーツの「戦犯」は、戦争犯罪人としての本来の意味である「捕虜虐待など、戦争法違反の罪をおかした者。また、戦争を起こした責任者としてその罪に問われるべき者」(岩波8版)とは懸け離れています。三国でも俗用としており、新聞で使うにはためらわれる用法ですが、皆さんの受け止め方が気になるところです。どう感じるでしょうか。
(2022年11月28日)