われわれ校閲記者が仕事中に手放せないのが「毎日新聞用語集」です。入社時に全社員に配布され、特に校閲記者は頭にたたきこむよう指導されます。中に書いてあるのは新聞製作にあたって守るべきことばのルールと、注意すべき事項です。新聞の日本語は難しすぎず、分かりやすい文であることが求められます。日常生活やビジネスなどの場においても同じことが要求されることは多いですから、毎日新聞用語集が一般の皆さんにも役立てる機会は多くあると思われます。
この用語集は書店などでも販売していましたが、2007年版を最後に一般向けに販売をしていませんでした。つまり、毎日新聞がどのようなことばのルールに基づいてつくられているのか、校閲記者たちがどのようなことに注意しながら働いているのか、読者の方に知っていただく手段がなかったのです。読者の方からの要望も受け、このたび「毎日新聞用語集」(電子版とオンデマンド版)を発売することになりました。
ここでは、読者の皆さんに興味を持っていただけそうな箇所を中心に、用語集の内容を紹介していきたいと思います。
保存している過去の用語集。社員用は赤い装丁のため「赤本」と呼ばれる |
目次
<用字用語集>
最もページ数の多い部分で、常用漢字表などを基準に表記の取り決めと用例を示したものです。
「効果があらわれる」のあらわれるは「表」「現」どちらを使えばよいのか、迷ったことはないでしょうか。このようなときに国語辞典を開いてみると、「表」「現」が同じ「あらわす」の項目に入っていて、どちらがより適切かよく分からない場合もあります。そんなときに「用字用語集」を見ていただけば、答えがわかります。用字用語集には同音・同訓異字の使い分けが豊富な用例とともに多数掲載されています。
このほか、「諧謔」「稀覯本」など、常用漢字表にない難しい漢字を使った語の言い換え例、また「大司教」と「大主教」のように似て非なる語の説明などが載っています。
<間違えやすい漢字、誤りやすい表現・慣用語句>
「揺るがせにする」「自分本意」「年棒」「遺失利益」「念頭に入れる」……全て誤った表記ですが、いずれも検索サイトで万単位のヒットがあります。「間違えやすい漢字」「誤りやすい表現・慣用語句」では、これらの要注意の語を数多く挙げて、解説しています。
<表記の原則>
「鼻血」は「はなじ」でしょうか、「はなぢ」でしょうか。「みじかい」は「短かい」それとも「短い」? 「表記の原則」では、仮名遣いや送り仮名などについて解説しています。
<数字の書き方>
われわれの日常生活で「14キロの距離」「150万円」といった洋数字表記を目にする場面が当たり前になってきています。しかし「1戸建て」「3杯酢」といった表記に違和感のある人は少なくないでしょう。どういう場合に洋数字を使い、どういう場合に漢数字を使うのか、「数字の書き方」では大量の例とともに解説しています。
<外来語と外国地名>
オーストラリアの首都はシドニーでもメルボルンでもなくキャンベラ。ブラジルの首都はサンパウロでもリオデジャネイロでもなくブラジリア。「外来語と外国地名」では誤りがちな外国地名を挙げているほか、世界の国名・首都名・主要地名をリストアップしています。
<紛らわしい裁判・法律用語>
「公示」「告示」、「勾留」「拘留」「拘置」、「自首」「出頭」、「過料」「科料」……違いは分かりますか? 紛らわしくて混乱しがちな裁判・法律用語について解説しています。
<紛らわしい地名、全国市区町村名一覧>
「北海道襟裳町」「JR四谷駅」「JR三宮駅」「東京都千代田区霞ケ関」……。いずれも間違った表記です。「紛らわしい地名」では、表記の誤りやすい地名や、別の場所と混同しやすい地名について解説しています。
「全国市区町村名一覧」は、全市区町村を読み仮名付きで一覧できる資料です。「平成の大合併」でなくなってしまった市町村名も確認できます。
<運動用語>
「運動用語」では、よく使われる各競技の用語や、新聞に載るラグビースコア・野球の個人成績表の見方などが解説されています。用語では「完封と零封」「刺殺と補殺」「打席数と打数」「暴投と捕逸と悪送球」など要注意の使い分けなども説明しています。
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