今日から9月の大型連休「シルバーウイーク」ですね。いろいろな計画をしている方も多いのではないでしょうか。もっとも、新聞製作にかかわるわたくしたちは、土日祝日といえども仕事が休みとは限らず、あまり実感はありませんが。
今年はカレンダー通りなら5連休ということもあって、「シルバーウイーク」という言葉をよく耳にします。「高速道路4社は21日、9月の大型連休(シルバーウイーク、9月19~23日)の渋滞予測を発表した」「今月下旬の『シルバーウイーク』は木、金を休めば9連休になる」のように、紙面にも登場しています。
この「シルバーウイーク」は、改正祝日法(2003年施行)で「敬老の日」が9月15日から9月第3月曜になり、曜日の並びによっては秋分の日(今年は9月23日)と合わせて大型連休になることもあるので言われだした新しい言葉だと思いますが、定着しているでしょうか。
試しに毎日新聞のデータベースを検索してみました。東京本社版(地域面を除く)では1990年代以降30件もありません。そのうち14件が法改正後初めて5連休となった09年の記事で、それ以外にはあまり登場していません。そんな中で、昨年12月の記事に「11月のシルバーウイーク」というくだりを見つけました(赤線は引用者)。11月? 誤りを載せてしまったのでしょうか。
辞書をひいてみました。
今使われている言葉を積極的に載せるという「三省堂国語辞典」(7版、14年)に載っていませんでした。「広辞苑」(6版、08年)や「大辞林」(3版、06年)などにも見つかりません。
「新明解国語辞典」(7版、12年)にありました。しかし、その語釈は「十一月三日の文化の日を中心とする……」と書かれています(赤線は引用者)。「日本国語大辞典」(2版、01年)も「十一月三日前後の休日の多い週」です。
9月については、「大辞泉」(2版、12年)に「9月の秋分の日前後または11月の文化の日前後」と併記されているのがやっと見つかり、少しほっとしました。
NHK放送文化研究所の「放送研究と調査」(96年7月)に、外来語を辞書がどう扱っているかについての調査があります。祝日法改正のずっと前で、9月の連休は想定していないころの調査ですが、「シルバーウイーク」が載っていました。「『シルバー』を、純粋に『銀』の意味で使っている複合語もある。『シルバーウイーク』もその一つで、新明解は初版(72年)から載せている」と書かれ、「11月第1週」であるということと「映画興行界から生まれたことば」という説が紹介されていました。
「シルバーウイーク」を載せなかったことについて、「三省堂国語辞典」の編集委員の方に伺うと、「確か、議論になったとは思うが、定着するかどうかわからないということで流れたのではなかったかと思う」とのことでした。確かに、11月をシルバーウイークと呼ぶ使い方はあまり聞かれませんし、9月にしても大型連休が数年に1度ならば、この言葉を「定着した」と見なすことは難しいかもしれません。
校閲としては、「11月」と明記された辞書があり、毎年盛んには使われないことを考えると、紙面で「シルバーウイーク」を使うときには「9月の大型連休」などの言葉を添えるといった配慮をした方がよいだろうと思います。
ところで、調べている中で、10年3月に観光庁が「新たに、春にも秋にも地域ごとに時期をずらした5連休を設ける」という構想を発表していることに気づきました。春のゴールデンウイークに対して秋はシルバーウイークと呼び、10月ごろを想定しているとか。この構想が実現すれば、毎年決まった5連休をシルバーウイークと呼べばよいので、「9月か11月か」の悩みはなくなります。しかし、内閣府が同年末発表した世論調査の結果によると、「反対」「どちらかと言えば反対」の計約56%に対して、「賛成」「どちらかと言えば賛成」は計約28%と、賛成は反対の半分にとどまっており、その後もこの構想についてはあまり聞かれません。
日ごろ片仮名語の安易な使用には気をつけているわたくしたちですが、シルバーウイークについては、祝日の行方も含め、今後も目が離せません。
【平山泉】