「募金」という言葉の使い方について伺いました。
「募金」に「お金を出す」意味、6割弱が認める
「募金をする」という表現。お金を出すこと? 集めること? |
お金を出すこと 29.4% |
お金を集めること 41.3% |
両方の意味を持つ 29.3% |
「出す」と「集める」の両方を意味する、という人も合わせると、6割弱の人が「募金」に「お金を出すこと」という意味を認める結果になりました。
「募金」という語は漢文風に読み下せば「金ヲ募ル」ですから、「お金を集めること」であるのは明白です。ただ、募金箱に少額のお金を入れることなどを「寄付」と言うのはちょっと大げさな気がする、という感覚があるのかもしれません。
岩波国語辞典(7新版)の「募金」の項目に付された解説が興味深いので引用します。
▽醵金(きょきん)・寄付する行為の意は一九八〇年ごろ学校から広まった誤用で、現在かなり多用。教師が言った「―のお金を持って来なさい」などを寄付の金銭と誤解したせいか。
「募金」を誤用するようになったのは学校のせいでしたか! 出題者には個人的な記憶はありませんが、辞書にそのように書かせる事情が存在したのでしょうか。確かに「寄付のお金を持って来なさい」とは言わないように思います。
毎日新聞の記事データベースでは、戦後すぐの記事でも「募金」が使われていたことが見出し検索で分かりますが、古い記事では文字通り、お金を集める運動に使われているものがほとんどです。しかし、全文検索が可能な1980年代後半になると、車いすで世界一周したカナダの青年が「千百万ドルの募金を集めてゴールイン」(87年5月23日)、「募金した人に赤い羽根をつける」(88年9月29日付)などと、集めたお金のことや、お金を出すことについて「募金」とする例も目立ちます。80年代に誤用が広まったという辞書の記述も違和感なく受け入れられそうです。
集めたお金のこととして「募金」を使うのも本来の用法からすれば避けるべきです。「寄付金」「義援金」などとするのが普通ですが、「寄せられた募金」を直すつもりで「寄せられた寄付金」としてしまうと重複感の強い表現になります。このような場合は「集まった寄付金」などとフレーズごと直した方がうまくいきます。
(2018年05月22日)
「募金」という言葉は読んで字のごとく「お金を募る」こと。「募る」はすなわち「広くよびかけて集める。募集する」(大辞林3版)ことですから、「募金」は「お金を集めること」で決まりです。
三省堂国語辞典7版は「募金」の項目に、本来の意味を記すほかに②として「〔あやまった使い方で〕おかねを寄付すること、また、そのおかね」という逆転した意味の説明を載せています。言葉の新しい用法に比較的寛容な三国ですが、「あやまった使い方」と断りを入れています。「募金」は熟語の構成が分かりやすいので、誤りとせざるを得ないのでしょう。
ただやはり、「募金を集める」「募金を呼び掛ける」のような表現はしばしば目にします。毎日新聞用語集ではそれぞれについて「寄付金(義援金)を集める」「募金への協力を呼びかける」などといった書き換え例を載せています。
(2018年05月03日)