読めますか? テーマは〈命〉です。
目次
命どぅ宝
ぬちどぅたから
(正解率 83%)命は大切な宝という沖縄の言葉。沖縄で反戦運動などのスローガンとして常用され、沖縄以外でも報道されるようになった。
(2016年03月07日)
選択肢と回答割合
いのちどぅほう | 9% |
ぬちどぅたから | 83% |
のちどぅたから | 8% |
行年
こうねん
(正解率 52%)「ぎょうねん」ともいう。ともに「死んだ人が生きていた年齢」の意味とする辞書もあるが、日本国語大辞典の「行年(こうねん)」には「『ぎょうねん』と読んだ例も見えるが、その場合は『享年(きょうねん)』の意」という注がある。
(2016年03月08日)
選択肢と回答割合
きょうねん | 29% |
こうねん | 52% |
あんねん | 19% |
早世
そうせい
(正解率 84%)早死にすること。「早逝」とも書くが、この表記を載せていない辞書もあり、毎日新聞でも「早世」に統一している。「夭折(ようせつ)」も同じ意味。
(2016年03月09日)
選択肢と回答割合
そうせ | 8% |
そうせい | 84% |
さっせい | 8% |
命冥加
いのちみょうが
(正解率 70%)死ぬところだったのが神仏の加護により助かること。冥は主に「めい」と読み「冥土」「冥福」など死後の世界を表すが「みょう」とも読む。他の例に「冥利」がある。
(2016年03月10日)
選択肢と回答割合
いのちみょうが | 70% |
いのちめいが | 5% |
めいみょうが | 25% |
蓋棺
がいかん
(正解率 84%)棺の蓋(ふた)をすることから、死ぬことをいう。「棺を蓋(おお)いて事定まる」は死後にその人の真価が決まるという意味のことわざ。唐の詩人、杜甫が不遇の若者を励ますために使ったという。
(2016年03月11日)
選択肢と回答割合
がいかん | 84% |
じんかん | 8% |
のうかん | 8% |
◇結果とテーマの解説
(2016年03月20日)
この週は東日本大震災を意識し「命」がテーマでした。
もっとも各語の解説に大震災に触れたものは一つもありません。かえって「命どぅ宝」という言葉が別の地域性を表すことになりました。
沖縄方言にもかかわらず「命どぅ宝」はかなりの人が読めるようです。「にもかかわらず」という表現が不適切に思えるほど、いまこの言葉は普遍性を獲得しているのかもしれません。ただ、この言葉を載せている辞書は調べた限りでは見当たりませんでした。
辞書といえば、「行年」の扱いにばらつきが見られたので報告します。
・広辞苑
こうねん【行年】(ギョウネンとも)生まれてこのかたの年。年齢。生年(しょうねん)
ぎょうねん【行年】①享年に同じ②→こうねん
・岩波国語辞典
こうねん【行年】①→きょうねん(享年)②生まれてから経た年。生年(しょうねん)
ぎょうねん【行年】①→きょうねん(享年)②こうねん(行年)
・新明解国語辞典
こうねん【行年】その人が今まで生きてきた年月
「ぎょうねん」は見出し語になく、享年の項に(「行年(ぎょうねん)」とも言う)というカッコ書き
・三省堂国語辞典
こうねん【行年】→ぎょうねん(行年)
ぎょうねん【行年】享年(キョウネン)。こうねん
・大辞林
こうねん【行年】これまで生きてきた年数。→ぎょうねん(行年)
ぎょうねん【行年】《「行」は経歴の意》「享年」に同じ。
・学研現代標準国語辞典
こうねん【行年】→ぎょうねん
ぎょうねん【行年】「こうねん」とも。死んだ人が生きてきた年数。「―七十五歳」
「享年」と同じという部分はおおむね一致しているですが、大きく分かれるのは、生きている人の年の意味があるかどうかです。昔の用例を見る限りでは、本来は生死に関係なく単に年齢の意味で使ったという気がします。しかし現代での使い方は死亡時の年の意味が大半でしょう。「行く」があの世に「逝く」の意味と解釈され、死者について用いられるようになったのかもしれません。
ただし「享年」という同義語がある以上、生者にも使われた「行年」をわざわざ用いることもないとも思えます。「行年」という言葉自体、去っていく流れにあるのかもしれません。
似たことは「早世」にもいえます。字面だけでは意味がわかりにくいのではないでしょうか。「早逝」という熟語は採用していない辞書もあるので今のところ「早世」を新聞でも用いていますが、いずれ「早逝」が主流にならないとも限りません。
「命冥加」「蓋棺」は一般的な言葉ではありませんが、それにしては比較的高めの正解率でした。
最後に中西進「ひらがなでよめばわかる日本語」(新潮文庫)から引用しましょう。
「ひつぎ」も、二つのことばからできています。霊力、霊格、霊魂を表わす「ひ」と、継続を表わす「つぎ」。つまり「霊魂を継ぐもの」が「棺」です。(中略)肉体は死んでも魂は死なないで、永遠に継がれていく。「ひつぎ」というのは、その魂を継ぐために入れておく、いわば受け皿としての器です。
その後に中西さんは「とてもすてきな詩」としてイタリアの詩人・ウンガレッティの「宇宙」の訳を紹介します。
海とともに
ぼくは
まあたらしい
棺になった
中西さんは「まあたらしい棺」は「第二の生の象徴」と解きます。この詩が、津波によって大切な人を奪われた方々の悲しみを、ほんの少しでも癒やすことになれば幸いです。