「肌をさすような日差し」「新味に乏しい内容」「きら星のごとく現れた○○選手」「『残念の一言』と声を振り絞る」「新装なった歌舞伎座の初舞台」……
しばしば見かける、本来とは違う意味合いで使われている言葉や、辞書ではあまり見つからない表現について、「直す」か「直さない」かをマスコミ各社の用語担当者に聞いたアンケートをまとめた第5弾です。(調査について詳しくは①をご覧ください)
目次
肌を刺す
直す=11.5社 |
直さない=9.5社 |
「直す」のうち1社は「刺す」をかなで「さす」にするという意見だったので、「肌を刺すような日差し」という表現そのものについては、完全に意見が二分したことになる。
「直す」派は、「肌を刺す」が寒さに使う表現であるという認識にもとづき、「焼き付けるような」「強い」「肌が焼けるような」などに直すとした。
「直さない」派は「実態をよく表している」「辞書で『刺す』をひくと『感覚器官を刺激する』とあり、確かに用例は北風や冷気などが多いが、近年の猛暑は肌に刺激的であるといえ、これでいいのでは」「一工夫した表現として許容できる」「若い人たちにはむしろ暑さの方で認識されている」などとコメント。ただ同時に「違和感のある人もいると思う」などと付け加える声も少なくなかった。
新味
直す=7社 |
直さない=14社 |
3分の2が「直さない」とした。「味わいや趣に限らず、単に目新しさや新しい事実という意味で使われており、違和感や誤解もないのではないか」「文脈の理解を助ける効果がある」「『新しい趣向』と解すれば問題ない」というコメントがあった。
「直す」場合では、「新味に欠ける」か「新鮮味に乏しい」にするという例が多かったが、「過去の使用例が多数」としつつ「直したい」とする声も複数あった。また全体的に新聞・通信社よりもテレビ局の抵抗感が強く、「新味は同音異義語が多々あり紛らわしい」「音で聞いてわかりにくい」という意見が目についた。
きら星(綺羅星)
直す=19社 |
直さない=2社 |
ほぼ「直す」という声で占められた。直し方の例は「彗星(すいせい)」「新星」。「一人で『きら星』とは言わない」「きら星は数々の実績ある人が複数いるような場合に使う言葉ではないか」などの声のほか、そもそも「『きら星』は本来誤用」との指摘もあった。
「直さない」とした中にも「使用実績多数だが、できるだけ彗星と直す」とコメントした社があった。
振り絞る
直す=13社 |
直さない=8社 |
声を「振り絞る」は大声を出すように感じるので、この場合は声を「絞り出した」「詰まらせた」などに直す、という意見が多かった。
しかし「直さない」も3分の1を超えた。「頻出しているのでいまさら直しにくい」「若干の違和感は残るが」のほか、「心情的な表現として十分通じる」「精いっぱいの声を出す、という本来の意味からすると、ここでは声を出すのもつらい状況から何とか声を絞り出していて、そう外れてはいないのでは。大きな声を出すだけが『精いっぱい出す』ことではないと思う」など、間違っていないという主張もあった。
初舞台
直す=20社 |
直さない=1社 |
ほとんどが「こけら落とし」「初日」などに直すと回答した。「初舞台」は「舞台に出る側にしか使わない言葉」「『デビュー』のニュアンスがある」などとし、この場合は不適切と指摘された。