読めますか? テーマは〈冬の季語〉です。
目次
小六月
ころくがつ
(正解率 27%)陰暦10月の異称で冬の季語。「小春」と同じで、真冬の前の暖かな頃合いをいう。「のびのびし帰り詣や小六月」(正岡子規)は、神仏へのお礼参りがようやくできたという句。きょうは立冬だ。
(2016年11月07日)
選択肢と回答割合
しょうろくがつ | 14% |
ころくがつ | 27% |
こむつき | 59% |
鞴祭り
ふいごまつり
(正解率 64%)11月8日に鍛冶屋や鋳物師などが行った、守護神を祭る神事。本来は陰暦だが新暦で行う所もある。鞴は製鉄などの際に用いた送風器。
(2016年11月08日)
選択肢と回答割合
ともまつり | 23% |
ふいごまつり | 64% |
いぶきまつり | 13% |
十日夜
とおかんや
(正解率 68%)陰暦10月10日(2016年は11月9日)の夜。東日本で、田を守る神が山へ帰る日とされ、子供たちがわらを棒のようにして地面をたたく。西日本の同様行事は「亥(い)の子」。
(2016年11月09日)
選択肢と回答割合
とおかさん | 10% |
とおにちや | 22% |
とおかんや | 68% |
蒲団
ふとん
(正解率 84%)現代では一般に「布団」と書くが、昔は蒲(がま)の葉などを編み敷物にしていたことから蒲の字を当て、敷布団を指した。「寒さうに母の寝たまふ蒲団かな」は正岡子規の句。なお田山花袋の小説に「蒲団」がある。
(2016年11月10日)
選択肢と回答割合
たどん | 9% |
ふとん | 84% |
がだん | 7% |
石蕗の花
つわのはな
(正解率 49%)石蕗は初冬に鮮やかな黄色の花を咲かせるツワブキのこと。俳句では略して「つわ」と読ませることが多い。「石蕗の花心の崖に日々ひらく」(横山白虹)
(2016年11月11日)
選択肢と回答割合
つわのはな | 49% |
いしぶきのはな | 44% |
せっこくのはな | 7% |
◇結果とテーマの解説
(2016年11月20日)
石蕗の花 by Jeffdelonge
この週は「冬の季語」。実感としては晩秋でしょうが、暦の上ではもう冬です。
今回最も正解率が低かった「小六月」は「小春」の同義語。「小春日和」の小春です。この小春日和は、8年前の11月に毎日新聞校閲グループが始めた漢字の読みクイズの第1回の問題でした。
その時の解説にも書いたように、新暦で11月ごろの春のように暖かい日を小春といいます。よく誤るのは春先に使うケース。毎日新聞でも以前2月に使って「訂正」となったことがあります。以前「知らなんだ小春日和は秋の季語」という投稿川柳があり、作者に問い合わせて「冬の季語」と直したこともありました。
小六月の「小」も小春の「小」と同じ使い方のようですが、ちょっとした疑問があります。旧暦の6月といえば新暦では既にかなり暑い時期にあたります。「暖かい日」という感じではないはずです。例えば「小三月」とか「小四月」の方が小春の同義語らしく感じられます。なぜ六月なのか、いろんな歳時記をみましたが、今のところ明確に答えてくれるものに出合えません。
「鞴祭り」の鞴については「鍛冶屋の教え 横山祐弘職人ばなし」(かくまつとむ著、小学館文庫)から引用しましょう。
日本書紀には、鹿の皮を丸ごと剥いで作った「天羽鞴(あまはのふいご)」という送風機が登場する。これは今のバーベキュー用の炭熾しや、ゴムボートを膨らませるための足踏みエアポンプと、原理・形状がほとんど同じである。
フイゴという語は、吹皮の変化したものであるという説もあり、現在でも、フイゴという字には吹子のほか、革偏の「鞴」を充てる。
そして製鉄に使う踏みフイゴの踏み手は「番子」と呼ばれ「かわりばんこ」の語源になったといいます。また、歌舞伎の助六の「たたらを踏む」という表現も、ここから出ているとのことです。ただし「かわりばんこ」の方は俗説ともされているようです。
「十日夜」という行事は「三省堂年中行事事典」によると
とくに十日にこれを行なうのは、稲作の神である稲荷(いなり)が音読みでトウカともいわれることから、トウカと十日が関連するという説もある
ということです。
「蒲団」はこの週で最も正解率が高くなりました。今は布団の表記になっても、田山花袋の小説が有名だからでしょう。「暮らしのことば 語源辞典」(講談社)によると
もともとは、禅僧が座禅を組むときに用いたもので、蒲(がま)の葉などを使って円く編んだ敷物をさし、「蒲(がま)団(円いもの)」と書いて唐音でフトンと読んだ。(中略)
江戸時代以降、綿作が広がるとともに、大型の綿入れの「蒲団」がつくられ、寝具に用いられるようになった。やがて、「蒲団」はおもに寝具の方をさすようになり、敷物の「蒲団」はむしろ「座布団」と呼ばれ、区別されるようになる。
「石蕗」はイシブキとも読ませるものがなくはないのですが、おそらく俗称でしょう。季語としての「石蕗の花」に「いしぶきのはな」の読みを認める歳時記は見当たらなかったので、誤りの選択肢としました。
「暮らしのことば 語源辞典」によると、古くは単にツハと呼ばれたとのこと。だから、俳句で「つわぶきのはな」より「つわのはな」と読まれることが多いのは、単に字数の関係ではなく古語としての言い方を大事にしていることもあるかもしれません。
ちまちまとした海もちぬ石蕗の花(一茶)