
「あんばい」という言葉の表記について伺いました。
目次
4分の3は「塩梅」を選択
| いい「あんばい」に晴れてくれた――カギカッコの中、どの表記がなじみますか? |
| 塩梅 75.2% |
| 案配 9.1% |
| あんばい 15.8% |
具合や加減を意味する「あんばい」をどう表記するかは、「塩梅」が4分の3を占めました。「案配」も誤りというわけではありませんが、こちらは1割に満たず。質問文のような場合に使うのは「塩梅」とするか、読みやすさを意識するなら仮名書きにするのがよさそうです。
もとは「えんばい」だった「塩梅」
新明解国語辞典8版は「あんばい」の項目で、[一]として「塩梅」の表記を挙げ、「物事のぐあい。『いいあんばいに晴れて来た』」と説明し、[二]では「按排」と表記し「他との折合いを考えながら、(順序立てて)事をうまく運ぶようにすること」としています。表記については[一]は「按配」、[二]は「案配」とも書くと追記します。
「塩梅」表記の例文は質問文とほぼ同じで、具合や加減といった意味では「塩梅」が主に使われることを示しています。「案配」については物事を配置したり差配したりするような場合に使われることになります。
「塩梅」は元々「えんばい」と読む語で、「案配」の旧表記である「按排」や「按配」とは別語でした。日本国語大辞典は語誌として以下のように記します。
程よく排列する意の「あんばい(安排・按排)」と、塩と梅の酢で食物の味加減を調える意の「えんばい(塩梅)」とが、中世末期から近世初頭にかけて混同されて使われた語とされる。したがって近世では用字の混用が認められるが、現代ではほぼ「塩梅」と書いてもアンバイと読むようになり、「按配する」「按排する」と、サ変動詞の語幹として使われるとき以外には「塩梅」と書かれるのが普通になった。
「塩」と書いて「あん」と読む語は、日本国語大辞典にも「塩梅」関連を除いて見つかりません。「按排」などと混同されたというのは理解できます。現在では「塩梅」の表記が普通になったというのは、元々が味加減に関わる言葉なので、日常的に使い方をイメージしやすいからかもしれません。

新聞協会用語集の説明も変わる
日本新聞協会で作っている「新聞用語集」の「あんばい」の項目は、2007年版では以下のようになっていました。
あんばい
=(按排、按配)→案配〔具合、加減、配置など〕
=(塩梅)→あんばい〔料理の味加減など〕
「塩梅」が仮名書きになるのは、「塩」を「あん」とする読み方が常用漢字表にない読み方だからです。ここで「あんばい」は、使う場面がかなり限定的に説明されています。
これが、改訂された2022年版ではこのようになりました。
あんばい
=(按排、按配)→案配〔ほどよい処理、配置〕
作業の流れを案配する、操作手順の案配をする
=(塩梅)→あんばい〔味加減、具合〕
体のあんばいが悪い、あんばいよく晴れた、酢の物のあんばいを見る
この変更は、用語集の改訂までの間に、同音異義語の使い分けについて新聞協会の用語懇談会で議論があったことによります。「具合」の意味で「案配」を使うことには読者の違和感が大きくなっているという声があり、「あんばい」とすることが賛同を得たため変更になりました。
新聞用語には一般社会と異なる場合があると感じている人もいるかもしれませんが、多少のタイムラグがあるとしても、議論を通じて適宜見直しを図っていることを示す一例と言えるでしょう。その議論に随分な時間がかかるというのも事実ではありますが……。
書く場合には仮名表記もおすすめ
今回のアンケートの結果からすると、「いいあんばいに~」などと書くときの表記は、常用漢字表にない読み方ではありますが「塩梅」が有力です。ただし、学校で習う読み方ではなく、これをすんなり読むことのできない人もいるはずです。
その点を踏まえると、実際に書く場合には仮名書きで「あんばい」とするのも有力な選択肢ではないかと考えます。誰でも読めますし、「案配」との使い分けを意識する必要もありません。漢字表記になじんでいる人でも、実際に書く場合には漢字に縛られる必要はないというのは他の語についても言えることで、場合によって使い分けるというのもスマートなやり方だろうと思います。
(2025年12月01日)
「あんばい」と読む「塩梅」と「案配」(旧来の表記は按配or按排)は元々は別の語でしたが、意味が近いので混同して使われるようになったとされます。三省堂国語辞典(8版)は「あんばい(塩梅・按配)」の項目で、「もと『えんばい(塩梅)』で、塩味と酸味〔梅酢で出す味〕の加減を言った。室町時代に『按配』と混同され、『あんばい』と言うようになった」と説明します。
意味は▽具合、加減▽物事をほどよく処理すること――といったところです。使い分けとしては、前者が「塩梅」、後者が「案配」と書かれる傾向があります(「塩梅」は常用漢字表にない読み方なので新聞ではかな書きの「あんばい」)。元々は別語とはいえ、古くから混同されてきた言葉なので、いずれの表記を使っても誤りにはなりません。
さてしかし、いずれも誤りにならないとは言いましたが、言葉を使う人にどう意識されているかは気になるところです。日本新聞協会の用語懇談会の議論では以前、質問文のような「具合」という意味で「案配」を使うと読者からクレームがつくことがあるとの声が出ました。「塩梅」が優勢になるのではないかと予想しますが、皆さんはどれを選んだでしょうか。
(2025年11月17日)
