長年言葉と向き合い、執筆活動も行う校正者の牟田都子さん。毎日ことばplusの「校閲力講座」や「学べるゲラ」で新聞校閲を「体験」している一人です。そんな牟田さんが実感する書籍の校正との違いや、牟田さんの受講スタイル、どんな人におすすめしたいかを伺いました。
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この講座から始めるといい
――「校閲力講座」の入門編を視聴してくださってありがとうございます。牟田さんには物足りないのではないかと心配したのですが……。
牟田さん 確かに基礎の基礎だと思いますが、校正者になりたい人や、別の仕事をしているけれど興味はあるというたくさんの人から、校閲の基礎の基礎を見たいと思ってエディタースクールに行くと聞きます。このようにオープンな場で、基礎の基礎、初歩の初歩から提供されるのはありがたいと思います。
校正・校閲をしていないライターや編集者が「これは見ておけ」と言っているのをあちこちから聞きますが、私も同感で、この講座から始めるのがいいと思います。オンラインの講座は期限があるものがとても多いのですが、校閲力講座は視聴期限がありません。
好きなだけ見ていいのが推せる
――社内で期限はどうするのか、期限ってあるものなのかという話もありましたが、なくていいのではという結論になりました。
牟田さん いつでも何度でも好きなだけ見ていいのが推せます。オンラインイベントや講座などはチケットを買ってオンラインで見ますが、1カ月ぐらいのアーカイブがつくのがほとんどで、早いと1、2週間です。1カ月でもあっという間なんですよね。「明日までです」っていうアナウンスが流れて「しまった!」みたいな。
あとは、一度動画を止めて、文章を読んで自分でおかしいところを探したり考えたりしてから戻れるのがいいなと思いました。自分がいかに拾えないかを実感できます。
――聞き取りにくいといったことはありませんか?
牟田さん 特になかったです。教材もあるし、耳で聞いて分かるように作られていますから。私は料理の下ごしらえをしながらとか、耳で聞くことが多いです。
学べるゲラは制限時間を設定
――牟田さんは有料会員登録もしてくださっています。有料会員になると毎日新聞の校閲記者の直しや解説が読める「学べるゲラ」がありますが、牟田さんは時間を決めて読んでいるそうですね。
牟田さん 時間制限があるのとないのでは全然違うと思います。別に時間内に読まなきゃいけないわけではないけれど、新聞ってこの速さで読んでるんだなっていうのが実感できたり、慣れている人はこの速さでこれだけの分量を読んで調べているんだなっていうのが分かったりすると、自分との差がくっきりします。現場の人が実際にこのくらいのスピードで読んでいるんだなっていうのを、私はすごく知りたいんですよね。
「毎日ことばplus」の有料会員向けコンテンツ「学べるゲラ」を校正してみた。青字は私が「落とした」箇所です。とほほ。
リンク先から第1回のみ、会員登録していなくても無料で「ゲラ」と「解説」が見られるそうです。校正・校閲に興味のある方は挑戦してみてください。https://t.co/21HLn4lhzZ pic.twitter.com/r0zL2DgGPP— 牟田都子 Satoko Muta (@s_mogura) September 20, 2023
――何分に設定してみましたか?
牟田さん わりと初期の回では、30分だと長すぎるよなと思って15分にしたのかな……。ものすごく焦っていた気がします。
校正・校閲のプロダクションが企業などで開く一日講座は、地方の人にとっては難しく、少し興味があるぐらいでもお金を払い、日程を合わせて行くのはハードルが高そうに思いますが、それでも行っている人は本当にいます。そういう方に毎日新聞の講座ができたことを知ってもらえたら。
書く側も絶対見て
――校閲力講座を視聴する方や有料会員登録をしてくださる方は、校正・校閲者だけでなく、意外とライターの方や、一般の企業の広報の方もいます。
牟田さん 校閲力講座って聞くと、校正・校閲をやる人が見た方がいいと思いがちですが、それだけではありません。読む側の人だけではなく、書く側の人も絶対に見たほうがいいと思います。校正・校閲に関して要素が全て入っている本やテキストは初心者が通読してできるようになるかっていうと違う気がします。もし校閲力講座が15年前にあったら私はどんなにうれしい気持ちだったか……。校正・校閲の専門部署がなく、自分でゲラを読まなければならない編集者や、見よう見まねでやっているライターの方々にも見てもらいたいです。
【聞き手・屋良美香子】
校閲作業を実際に体験できてスキルを磨ける #学べるゲラ ✍
書き込まれた校閲記者の指摘と、考え方や調べ方の詳しい解説が見られます🖍
第1回👇【無料公開】https://t.co/YhYuYAZgje
第4回👇【無料公開】https://t.co/yCTQrjiu0g pic.twitter.com/okB7njh7PZ— 毎日新聞 校閲センター (@mainichi_kotoba) December 3, 2023