京都府宇治市の観光名所を案内する読み物に「10円玉の裏に平等院の鳳凰堂(ほうおうどう)がある」とあった。
確かに10円玉には鳳凰堂が描かれているが、さて、それは「裏」なのか。
しかし、造幣局では作業の必要などから年銘(発行年)のある側を「裏」としているという(上の写真では右)。
各硬貨のデザインは▼1円玉 表=若木(特定の植物ではない)。裏=1、年銘
▼5円玉 表=五円、稲穂、歯車、水。裏=双葉、年銘
▼10円玉 表=平等院鳳凰堂、唐草。裏=10、常磐木(ときわぎ)、年銘
▼50円玉 表=菊。裏=50、年銘▼100円玉 表=桜。裏=100、年銘
▼500円玉 表=桐(きり)。裏=500、竹、橘(たちばな)、年銘。
上の写真では、すべて右が「裏」となる。5円のみ額が示されていない。
どれほど一般に知られているのかは不明だが、今回はこの決まりに従い、裏→表とした。
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ウは羽化しません
京都・宇治川のウ飼いの写真説明に「人工う化した鵜(う)」とあったが、「ふ化」と直した。「う化」は「羽化」で、昆虫のさなぎが変態して成虫になること。一方、「ふ化」は卵がかえること、卵をかえすこと。ウは鳥類なので「ふ化」。漢字では「孵化」と書くが、「孵」が常用漢字ではないため平仮名で。なお、「鵜」も表外字。このため「ウ飼い」「鵜匠(うしょう)」「うのみ」といった表記となる。
「喝采」と「快哉」
読者投稿のコラムで「『わあー。その話、乗ります』 。私は心の中で喝采した。(中略)お声をかけてくださってありがとう」とのくだり。「喝采」は「やんやとほめそやすこと。またその声」。しかし、この文脈は「心の中で喜びの声を上げた」という意味に取れるので、「痛快なこと」を表す「快哉(かいさい)を叫んだ」に改めた。音が似ているため「喝采を叫ぶ」との混用も目にするが誤用だ。
原因不詳――脅威の入力ミス
×ヘイトスピーチ(増悪表現)→○憎悪表現
×企業は収益本意に動く→○収益本位
×死因不祥と発表→○死因不詳
×(行方不明者の)創作活動→○捜索活動
×(人生がいやになり)受水する→○入水する
×ラスト15㍍で脅威のスパート→○驚異
「入水」(じゅすい)は水中に身を投げて自殺すること。「受水」は調べた限り、辞書には見当たらない言葉だが、水道水を引くことを意味し、「(自治体への)受水の申請」「受水槽」といった用例がある。そして「脅威の=恐るべき」変換ミス。追い上げられる側にとっては確かに「脅威」だが……。ここは「非常に驚くほど」の意。
【沢村斉美】