うっかりすると駄目になってしまいそうな問題、の表現について伺いました。
「敏感な問題」「機微な問題」どちらも違和感が7割
取り扱いに注意を要する問題。どんな言い方を使いますか? |
敏感な問題 18.4% |
機微な問題 11.8% |
どちらも違和感がある 69.8% |
「どちらも違和感がある」が約7割という結果でした。回答からの解説では、出題者にとっても違和感のある表現だと書きましたが、その感覚は一般的なものなのだと勇気づけられます。
ただし、合わせて3割の人が「敏感な」あるいは「機微な」を使うとも。ちょうどよい日本語表現が見当たらないために、これらの語が用いられるという事情もあるのでしょう。
「敏感」について、大辞泉2版(2012年)では「補説」として
国家間の交渉の対象となる微妙な事柄について「慎重に扱うべきデリケートな」の意で用いることがある。一説には、90年代の初め、日中交渉で中国側がこの意味で使った「敏感」を日本の新聞がそのまま取り入れたものという。
と説明。このような使われ方は新聞のせいだったのか、と考えると少々気落ちします。
ちなみに毎日新聞で確認できる初出(「敏感な問題」で検索)は1989年。時の中国外相による「日中間の歴史には敏感な問題があり……」という発言で、大辞泉の指摘に沿う時期,内容の記事でした。
「機微」については、英語の「sensitive」(デリケートな、微妙な、要注意の<プログレッシブ英和中辞典4版>)の訳語として使用されるケースが目立ちます。特に「情報」と組み合わされることが多く、金融庁が出した「金融分野における個人情報保護に関するガイドライン」では「機微(センシティブ)情報」という書き方をしています。
「機微」のもともとの名詞としての意味(=表面的には分からない微妙なおもむき)に照らすと、単に「センシティブ情報」としてよいところだと思うのですが……。カタカナだけで分かりにくいと言われるのを避けるためでしょうか。
(2018年05月01日)
「敏感」は「ものに感じやすい様子」、「機微」は「表面的には分からない微妙なおもむき」といった意味で使われる言葉です。しかし、これら従来の用法に加えて双方とも、慎重に扱うべき物事への修飾語として用いられることがあります。
「敏感」については三省堂国語辞典が「とりあつかいに注意が必要なようす」という説明を第6版(2008年)で採用しており、社会に浸透しつつあることがうかがえます。
「機微」については、従来の意味以外を挙げている辞書は確認できず。しかし、外交文書などではかなり前から「機微な」と形容動詞化されて、英語の「sensitive」(デリケートな、微妙な、要注意の<プログレッシブ英和中辞典4版>)の訳語として使われています。例えば日米原子力協定の日本語正文にある「機微な原子力技術」という用語は、英語正文の「sensitive nuclear technology」に対応するといった具合です。
とはいえ、どちらも日常的な用法からみて、違和感があるという人もいると思います。出題者もその一人ですが、すっきりした言い換えを思いつくことができずにいます。
(2018年04月12日)