オバマ米大統領の歴史的な広島訪問を伝える2016年5月28日朝刊各紙で、資料館の表記に微妙に違いが見られました。
朝日新聞:初めに「平和記念資料館(原爆資料館)」、2回目で「原爆資料館」
読売新聞:平和記念資料館
日本経済新聞:広島平和記念資料館(原爆資料館)
産経新聞:原爆資料館
東京新聞:初めに「平和記念資料館(原爆資料館)」、2回目で「原爆資料館」
毎日新聞:原爆資料館
この施設は、正式名称は「広島平和記念資料館」で、通称が「原爆資料館」です。これをどう扱うかという違いです。
毎日新聞広島支局では、以前から一貫して「原爆資料館」と書いていました。ちなみにNHKもほぼ「原爆資料館」に統一されているそうです。個人的には、私も広島出身で、ずっと「原爆資料館」と言ったり聞いたりしていました。ですから「平和記念資料館」には若干、違和感をぬぐえません。
実は広島市でも一時、改称を含む問題提起があったようです。ホームページで公開されている「広島平和記念資料館展示整備等基本計画・資料編」に「施設名称についての意見聴取結果」が記されています。広島市によると、2008年7月ごろに基本計画検討委員会委員を対象に行った意見聴取の結果だそうです。
それによると、21人中13人(62%)が「原爆」と付く名称への変更を求めていました。内訳は「広島原爆資料館」8人、「広島平和記念原爆資料館」5人で、その他は「現在の『広島平和記念資料館』を変更せず、通称として『広島原爆資料館』」5人、「現在の名称でよい」3人でした。「一般市民に原爆資料館の名称で親しまれており、かえって広島平和記念資料館のほうが、なじみが薄い」という、私の印象と同じ意見のほか「平和記念・平和資料館等平和を冠する博物館は、国内に複数存在するところから印象が薄い。『原爆』を使用できるのは広島と長崎のみ」「『広島』『原爆』は必須だが、『平和』はやはりキーワードの一つ。従来の名称を公式名称として使用しつつ、実質的に『原爆資料館』と呼び習わされていることを、活用するのがよい」「平和記念都市建設法に基づき設置されたことを考えると、法律の趣旨が館の名称に表現されていたほうがよい」などと、それぞれの立場から真剣な意見が交わされています。
しかし、結果的に名称はそのままになりました。広島市に問い合わせると、「現在、平和記念資料館の名称変更について検討は行っておりません」。ですから当然ながら「本市が広報等で施設名を示すときには、正式名称である『広島平和記念資料館』を使用しています」。 通称と正式名称の違いが混乱を来すことがないかと聞くと、「確認する限りでは名称で混乱を生じているということはありません」とのことでした。
私としては、個人的ななじみを別としても、「国立広島原爆死没者追悼平和祈念館」という別施設との違いを際立たせる意味から「原爆資料館」というシンプルな表記がベストと思います。また、平和記念資料館の「記念」が「祈念」になるという、よくある誤記を防ぐためにも「原爆資料館」がよいという気持ちもありますが、これはまあ、書き手と校閲がしっかりすればすむことですね。
【岩佐義樹】