読めますか? テーマは〈公人のあり方〉です。
目次
罷職
ひしょく
(正解率 59%)自分から職を辞めること。または辞めさせること。「罷」は現代では主に「罷免」の形で使うが、「弱い」「許す」「疲れる」という意味もあるという。公私混同が不適切とされた舛添要一・東京都知事は涙の訴えで弱さも見せたが、許されなかった。お疲れ様でした。
(2016年06月20日)
選択肢と回答割合
ひしょく | 59% |
めんしょく | 25% |
りしょく | 16% |
清白を子孫に遺す
せいはくをしそんにのこす
(正解率 47%)役職を利用して財産を残すのではなく、清廉潔白という美風を子孫に残すべきだという、「後漢書」にある楊震の言葉。楊震は賄賂を断った時の次の言葉でも知られる。「天知る、地知る、我知る、人知る」。隠し事は必ず露見するということだ。
(2016年06月21日)
選択肢と回答割合
せいはくをしそんにのこす | 47% |
すずしろをしそんにのこす | 14% |
せいびゃくをしそんにのこす | 39% |
不行状
ふぎょうじょう
(正解率 58%)普段の行いがよくないこと。身持ちが悪いこと。「医者の不養生、学者の不行状」という言葉が明治時代の雑誌にあるが、学者は行いが良いという認識が前提となっているのだろう。
(2016年06月22日)
選択肢と回答割合
ふこうじょう | 22% |
ふぎょうじょう | 58% |
ぶぎょうじょう | 20% |
已んぬる哉
やんぬるかな
(正解率 85%)「もうおしまいだ」という嘆き。論語で孔子はこれに続き「自分の過失を認めて自責することができる人を見たことがない」と言う。「已」は「完全に終わりになる」という意味合いの字。己(おのれ)、えとの巳(み)と似ているので要注意だ。
(2016年06月23日)
選択肢と回答割合
やんぬるかな | 85% |
みんぬるや | 6% |
おんぬるや | 9% |
吝嗇
りんしょく
(正解率 81%)ひどく物惜しみすること。けち。ちなみに、喜んでする意味の「やぶさかでない」は漢字では「吝かでない」と書く。
(2016年06月24日)
選択肢と回答割合
ばら | 2% |
りんしょく | 81% |
やぶさか | 17% |
◇結果とテーマの解説
(2016年07月03日)
この週のテーマは「公人のあり方」。ある人の辞職がきっかけだということはお分かりだと思います。誰のこととはいいませんが。
「罷職」の「罷」は常用漢字ですが、「罷免」以外まず見ないので応用がきかなくなっているのかもしれません。ちなみに罷免は「公務員をその意に反してやめさせること」(大辞林)。「罷」は「本来は“網に掛かって動けなくなること”を表す」(円満字二郎「漢字ときあかし辞典」研究社)。週刊文春などマスコミの取材網に掛かって動けなくなり、その意に反してやめさせられた人のことを連想させます。誰のこととはいいませんが。
「清白を子孫に遺す」はこの週で最も低い正解率。「楽しく使える故事熟語」(文春文庫)で見つけた語です。たまたま「文春」がかぶりましたが時々この漢字クイズのねたとさせていただいています。
後漢の楊震は、三公の位に在っても公正廉潔で、ご機嫌伺いを断り、家族は粗末な食事をし、車にも乗らなかった。知人たちは財を築くよう勧めたが、「後世、清廉潔白だった役人の子孫だと世間から呼ばれることを、遺産としてのこすのだ」と断った。
「車にも乗らなかった」というところ、特に公人は教訓にしてほしいですね。いや別に公用車で温泉に通っていた人のこととは限りませんよ。公共交通機関が利用できる所ならそれに乗ってほしいと思います。
「不行状」は当初、同義語の「不行跡」を出題しようと思っていました。しかし大多数が「ふぎょうせき」とはいうものの、他に「ふこうせき」も載せる辞書があったのでこの言葉に。いや別に誰かに事よせて「医者の不養生、学者の不行状」という言葉を強調したかったわけではありませんよ。
「已んぬる哉」は今回最も正解率が高くなりました。この言葉は太宰治「走れメロス」に出てきたのでご存じの方も多かったかもしれません。出題時の解説で引用したのは「論語」(岩波文庫)の「已んぬるかな。吾れ未だ能く其の過ちを見て内に自ら訟(せ)むる者を見ざるなり」の現代語訳。もちろん孔子の言葉ですから、とても過ちを認めたようにみえなかった誰かのことではありませんよ。
最後に「吝嗇」。「けち」のことですから、いうまでもなく公金でぜいたくをして「せこい」とさんざん言われた人のことではありません。「けち」と「せこい」は若干意味がかぶるだけで用法はだいぶ違います。大辞林の「せこい」にはこうあります。
〔役者・寄席芸人の隠語から〕①悪い。醜い。下手だ。くだらない。②少ない。けちだ。しみったれている。 ③料簡(りようけん)が狭い。いじましい。
単に金銭的な問題だけではなく、これらをひっくるめた意味として「せこい」という言葉が多用されたと思われます。
それにしても、今年初めごろ「ゲス」、今回は「せこい」と、なんだかお下品な言葉が一時的にわっと氾濫し、すぐに潮が引くように忘れられる世相、なんとかなりませんかね。特定の誰かが悪いというより、マスコミが自戒しなければならないことですが。