読めますか? テーマは〈山〉です。
目次
山懐
やまふところ
(正解率 36%)「やまぶところ」とも。山に囲まれた所。「山懐に抱かれた村」などと使う。「山ふところ」は「源氏物語」にも用例が見える。
(2016年08月08日)
選択肢と回答割合
さんかい | 61% |
やまふところ | 36% |
やまかい | 4% |
翠巒
すいらん
(正解率 42%)みどり色の連山。巒は「みね」の意味。群馬県立高崎高校の応援歌が「翠巒」。長崎市の原爆で多くの生徒・教員が犠牲になった旧制県立瓊浦(けいほ)中の校歌にもあり、「瓊中翠巒会」の同窓生らは毎年慰霊祭を行っている。
(2016年08月09日)
選択肢と回答割合
かわせみ | 28% |
すいらん | 42% |
すいれん | 29% |
懸崖
けんがい
(正解率 83%)切り立った崖。または、幹や枝が根より低く垂れ下がった盆栽など。小池百合子さんは2016年の東京都知事選で「崖から飛び降りる覚悟」で立候補し当選した。
(2016年08月10日)
選択肢と回答割合
けんがい | 83% |
かけがけ | 4% |
かけがい | 13% |
桟道
さんどう
(正解率 80%)崖などに棚のように木を渡してつくった道。「箱根の山は」の歌い出しで有名な「箱根八里」の2番に「蜀の桟道数ならず」とある。蜀は三国志の国で、その都に通じる険しい道も物の数ではないほど箱根の山は険しいと歌う。今はロープウエーなどで楽に登れる。
(2016年08月12日)
選択肢と回答割合
さんどう | 80% |
せんとう | 15% |
きどう | 5% |
◇結果とテーマの解説
(2016年08月21日)
この週は
「山の日」に合わせ「山」がテーマでした。
Photo by Yasu
「山懐」が今回最も読みにくい語でした。音読みか訓読みか、言葉を知らなければ判断が付かない熟語の一つです。ちなみに「山間」は「さんかん」とも「やまあい」とも読みます。間に「あい」の読みが常用漢字表にないので、新聞では「やまあい」の場合は「山あい」と表記していますが、「山間」とあると「さんかん」と読ませるべきか「山あい」に直すべきか迷うことが少なくありません。常用漢字のルールに関係ない人でも、読む人のことを考えれば「やまあい」なら「山あい」と書くことをお勧めします。「山懐」に関しても、音読み熟語と思う人が多いので「山ふところ」と表記した方がいいでしょう。種田山頭火の句にもあります。
山ふところの、ことしもここにりんだうの花
山頭火(そういえばこの号にも「山」が付きますね)の有名な句に
分け入っても分け入っても青い山
がありますが、連なる青い山を表す熟語が「翠巒」。難しい字ですが歳時記にもあります。知らなくても「鸞」の字は「親鸞(しんらん)」の鸞とつくりが同じだと気付けば推測が付くかもしれません。
「懸崖」は簡単すぎるという声もありましたが、3択での83%という結果は必ずしもそうではないことを示しています。いま本来の「がけ」というよりは盆栽や菊の作品名として使われることが主ですので、その方面に関心がなければ言葉自体知らない人が多い可能性があります。「断崖」なら100%近くになったに違いありません。
「桟道」も、「桟橋」ならそれこそ簡単すぎるでしょうが、それ以外あまり使われないので読みにくい人があったようです。出題者自身、今回初めてこの言葉を知りました。出題時触れた「箱根八里」も2番まで歌える人は少ないのではないでしょうか。「2番」と書きましたが、岩波文庫「日本唱歌集」では「第二章 今の箱根」となっています。1番に当たるのは「第一章 昔の箱根」。
箱根の山は 天下の険 函谷関(かんこくかん)も物ならず
の歌い出しで、最後が
斯(か)くこそありしか往時の武士(もののふ)
となっています。それが「第二章」でそれぞれ
箱根の山は 天下の阻(そ) 蜀の桟道数ならず
斯くこそありけれ近時の壮士(ますらお)
となります。難しい言葉が多い歌詞ですが、意味も分からずそういう歌を歌うことで自然に子供は言葉を覚えていくものです。そして大きくなって三国志に興味を持つと「蜀の桟道」という言葉が特別の感慨をもって思い出されるでしょう。1番だけでも長い歌ですが、それだけで終わるのはもったいない気がします。