「V3」という見出しをどう受け取るかについてうかがいました。
目次
「3連覇」と取る人が7割超す
「〇〇が『V3』」という見出しがついていたら、どう受け取りますか? |
3度目の優勝 22.8% |
3連覇 72.2% |
3連勝 4.9% |
「3連覇」とした人が4分の3を占めて多数派となりました。「V」自体は「勝利」という意味であるため「3度目の優勝」「3勝目」を指すとも考えられるのですが、「V+数字」(=V〇)は「連覇」だと受け取る人が多いようです。
辞書は「○度目」「○連覇」両様
国語辞典ではどのように記されているでしょうか。先日改訂されたばかりの新明解国語辞典8版の「ブイ」の項目には「勝利。優勝。『―4[=四度目の優勝(四連覇)]成るか』」との説明があり、「〇度目の優勝」「〇連覇」の用法を紹介しています。一方、三省堂国語辞典7版は「勝利。優勝。『―3[=三連覇]』」としていて、こちらは「〇連覇」派でした。
英語では、「連勝」を「consecutive wins」「wins in a row」「straight victories」(=連続した勝利)、「連覇」も「win consecutive championships」(=連続して優勝する)、「defend the title」(=タイトルを守る)などと表現し、「連勝」「連覇」に相当する英単語は存在しないようです。単語の頭文字を取って表すことができないため、「victory(勝利)」の「V」が派生して使われているのかもしれません。
字数の節約になる「V○」
また「V〇」が連覇の意味で広く使われるようになったのは、新聞特有の事情も関係していそうです。新聞の記事、特に見出しは限られた字数の中で情報を伝える必要があります。「3連覇」を「V3」とすれば1文字減らせる上に、画数も少なく目立たせることが可能です。そしてスポーツのニュースとして重きが置かれやすいのは、誰が優勝したのかという点。連覇を成し遂げたのであれば見出しどころとなりやすく、その際に何回連続して頂点に輝いたのかを伝える表記として「V〇」が定着したのでしょう。
毎日新聞の記事データベース(東京本社版)で過去の見出しを検索してみると、「V〇」の最も古い使用例は1972年8月22日付の「巨人『V8』の足音」でした。そして巨人がV9を達成した翌73年以降から「V〇」の見出しが急増します。当初はV9をもじるという意識があったのかカギかっこがつけられていましたが、次第に巨人だけでなくスポーツ全般の連覇に用いられていき、カギかっこなしで使われるようになりました。ちなみにコメントで多くいただいた「仮面ライダー」も、「仮面ライダーV3」の放送がまさにこのころ(=73年)に始まっています。
表現として「連覇」「連勝」が定着
質問時には、整理記者によって解釈に差があると書きましたが、データベースで「V3」と検索してみると、直近100件では「EV3車種」など無関係のものを除けば全て「3連覇」「3連勝」の意味で使われていました。英語的に考えてみれば「V3=3度目の優勝」としてもおかしくないのに、3連覇と混同しないようにこちらは「3度目V」とする――「3度目の優勝」にしてみれば何とも肩身の狭い“逆転”が起きているのです。
(2020年01月22日)
スポーツ面の見出しによく用いられる「V3」など「V+数字」(以下「V〇」)という表記。しかし、実は明確に定義が決められているわけではないため、その意味するところは「〇勝目」「〇度目の優勝」「〇連勝」「〇連覇」などと揺れがあります。原稿に見出しをつける整理記者に聞いてみても、「〇度目の優勝か〇連覇かはケース・バイ・ケース」「〇連覇の時だけに使う」といった具合に、人によって解釈に差があるようです。
「V〇」の「V」はvictory(勝利)を指します。victoryという英単語だけで「連勝」を表すことはないため、単純に考えれば「V〇」=「〇勝目」となるはず。とはいえ巨人の日本シリーズ9連覇(1965~73年)を「V9」とすることもあってか、「V〇」といえば「〇連勝」、とりわけ連続して頂点に輝いた回数=〇連覇を表すのが定着しているように思えます。
先日は、都市対抗野球で11年ぶり3度目の優勝を果たしたホンダについて、最初は「V3」の見出しがついていたものの、3連覇に見えてしまうとの意見が出て別の表現に差し替えられました。紛らわしさを避けるために、「3勝目」であれば「3度目V」とする傾向にあります。
今回のアンケート結果もやはり「〇連覇」派が多いように予想しますが、いかがでしょうか。
(2020年01月04日)