「元日」「元旦」の使い方について伺いました。
目次
3分の2は「元旦」とせず
1月1日のことを、どう呼びますか? |
元日 67.3% |
元旦 12.3% |
上のいずれも使う 20.4% |
1月1日のこととしては「元旦」は使わず「元日」のみ、という人が3分の2を占めました。ただしこれは同時に、残り3分の1は「元旦」を(も)使うということでもあります。辞書では「元旦」を「元日」と同様に使うことについては「誤り」としているものもありますが、説明には濃淡があります。
辞書の記述も濃淡あり
毎日新聞の校閲部署が以前出していた、社内向け文書のある年の年末号には「元旦は朝のことだよ気をつけて号」という副題がついていました。校閲記者にとっては「元旦」は朝限定というのは共通認識なのですが、記者にも周知しようと付けられた題でしょう。しかし、国語辞典を見てみると「元旦」の説明には濃淡があるようです。
辞書の説明を、かいつまんで眺めてみます。
三省堂国語辞典7版 ②〔あやまって〕元日。「―の夜」
大辞泉2版 [補説]「旦」は「朝・夜明け」の意であるから、「元旦」を「元日」の意で使うのは誤り。ただし、「元日」と同じように使う人も多い。
岩波国語辞典8版 ②俗に、元日。
明鏡国語辞典3版 [注意]「一月元日」「元旦の朝」は厳密な意味では重言。改まった場では、それぞれ「○○年元旦」「○○年一月一日」「元日の朝」などとしたい。矛盾表現となる「元旦の昼」「元旦の夜」なども避けたい。②一般に、元日。一月一日。
新明解国語辞典7版 〔もの皆改まって感じられる〕元日(の朝)。
日本国語大辞典2版 正月元日の朝。元朝(がんちょう)。また、一月一日。元日。げんたん。
広辞苑7版 元日の朝。元朝。また、元日。一月一日。
大辞林4版 元日の朝。元朝。また、一月一日。元日。
上から下に向かって、「元旦=元日」の否定派から肯定派、という感じでしょうか。新しい用法を積極的に取り入れる三省堂国語辞典が「あやまって」としているのが印象的でした。広辞苑や大辞林といった中辞典がむしろ、「また」という言葉でつなぐ説明をすることで、元日の別称として認めているように見えます。
注意が必要なのは確か
辞書以外はどうか。角川俳句大歳時記では「元旦」は「元日」の項目に併載されています。いわく「元日と同意として、元旦、大旦、鶏旦など、旦を用いた言葉が傍題として出ているが、これは元朝の意、本来は一月一日の朝を寿(ことほ)ぐ意をいうので、句作の際には注意のこと」とあります。一般には1月1日の意味で通用することが多いが、人によっては気になる言葉なので注意せよというのは、明鏡の説明につけられた「改まった場では」気をつけるように、という注意書きと同調するようです。
「元旦」は「元日」と同じ意味に扱われることも多く、広辞苑などの説明はそうした実情を映したものでしょう。一方で、本来は「元日の朝」だということを意識すべき場面もあると考える立場もあり、新聞などもそちら側にくみするものです。公共の言葉としては、1月1日は「元日」、その朝が「元旦」とする区別は今後も必要と言えそうです。
(2020年01月19日)
明けましておめでとうございます。本年も「毎日ことば」のアンケートをよろしくお願い申し上げます。
さて、本日のテーマになる言葉は「元旦」です。校閲記者は口を開けば、「元旦」は朝のことで1月1日全体を指すならば「元日」にせよと言い立てますが、辞書の記述はさほどでもありません。「元旦」については「元日の朝。元朝。また、一月一日。元日」(大辞林4版)というほどの説明で、「まあ朝のことだけど、日全体のことも言うよね」ぐらいのスタンスのものが多いのです。
ただし「旦」の字は象形文字で、地平線から太陽が姿を現すところとも、朝の「雲上に日が半ば姿をあらわした形」(白川静「字統」)とも言います。日が沈むところにだって見える、とは言えますが「旦」に対応するのは「夕」。「夕の月の形」(同)を表します。
最近新版が出た新明解国語辞典は「元旦」を「〔もの皆改まって感じられる〕元日(の朝)」と説明します。この「もの皆改まって感じられる」という空気感はやはり「朝」がしっくりくると思うので、日のこととしては「元日」をおすすめしたいのですが、皆さんはどうお使いでしょうか。
(2020年01月01日)